第11話

幽霊船と聞いて微妙に挙動不審となった源治とその一行は陸に上がるとレンタルしていたボートを返却し、近くの喫茶店に入った。


 観光客が居ないせいで閑散とした店内で湖底に沈んだ船をどう対処するかの会議が始まった。


「あれが夜になると水面まで浮かんでくるらしいね」


「AA、浮かんできたからといってあちらからは何かしてくるわけではないGA面白半分デ近づいたものなどHA例外なく行方不明になっていRU」


「私達で乗り込んで正体を確かめて、正体によってはとっちめるのが一番わかり易いよね・・・って聞いてるの?」


「ふえっ?」


 菫と凛が話している横でコーヒーに砂糖を入れていた源治は凛に声を駆けられて初めて砂糖を入れていた手を止めた。


 コーヒーには某安楽椅子探偵が飲むコーヒーのように砂糖が山のように入っており、それを一口飲んだ源治は盛大に顔をしかめてテーブルにカップを置く。テーブルに置いたカップをいらないなら中身を貰うぞと菫が一息に飲み干しそれを見ていた二人がドン引きしたところで会話が再開される。


「それで?さっき言った案で行こうと思うんだけどどうなの?」


「い、良いんでないかい?シンプルなのは大事だよ、大事、うん」


「ねえ?もしかして本当に幽霊が怖いの?」


「・・・・・・太陽がもしも無かったら地球はたちまち凍りつき花は枯れ鳥は空を捨て人は微笑み無くすんだよ」


「これは重症DA、「狂っタ死神」と呼ばれた男ガ最も恐れるのが幽霊とは皮肉だナ」


「「狂った死神」・・・かっこいい」


「おいおイ、カオスな空間だNA、ツッコミは私だけカ?」


 図星を突かれ太陽戦隊になりかけている源治と唐突に現れた中2的なあだ名に心奪われた凛を見ながらため息を付いた菫は代金を払って別世界にトリップした二人を引きずり喫茶店を出れば、店の外で源治にはビンタを、凛には胸を揉み頬にキスをするオーバーキルで正気に戻せば、二人からの非難を受け流しながら宿へと帰っていった。


 夜、改めて湖へ出発という段になれば、案の定幽霊嫌いな源治がごね始めた。


「嫌!!あたいは行かないわよ!」


「行かないって・・・なんでオネエになってるの?」


「というよりMO怪異は良くテ幽霊は駄目っTE何が違うんダ?」


「怪異、斬れば、血が出る、血が出るなら殺せる、幽霊、斬っても、血が出ない、血が出ないなら殺せない、俺、怖い」


「重症だNA・・・凛君、気絶させて持っていくゾ。今はヘタレでもこの男の戦闘能力HA何かあったときに必要ダ」


「そうだね、それじゃ一発いくから動かないでね」


「やめて!乱暴する気でしょ!エロ同人みたいゲフッ!!」


 ボディに良い一撃を貰い気絶した源治を菫が担げば、源治の愛刀斬無を細長いカバンに入れ、後の鞄には懐中電灯や簡易的な酸素ボンベなど探索道具だけ入れた鞄を凛が持てば本日2回目となる湖散策へ向かった。 

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