第8話

「突然だが!旅行だ!」


「は?急にどうしたの?暑さで頭がおかしくなった?」


 人狼狩りの夜から数週間たったある日のこと、朝食の席で突然そんなことを言い出した源治に凛は冷ややかな目を向けた。ちなみに凛の今の格好はミニスカのメイド服でありこの姿は、以前源治との決闘に負けたときの敗者へのペナルティ「勝った方の言うことをなんでも聞く」によって源治から与えられた「メイドになって家事と自分の複業のアシスタントをやれ」の結果であり、凛は源治の屋敷にいるときはこうしてメイド服の着用を義務付けられている。しかし、凛は料理等の家事類の一切が駄目であり家事は今まで通り全て源治がやっている状態である。


「だから旅行だって、りょ・こ・う、Travelだ」


「旅行にいくのはわかったけど、なんで?」


「取材旅行と休暇を兼ねてだ。」


 この源治の取材旅行というのは複業である小説家としてだった。


 源治は退魔部の一員として以外に小説家というもう一つの顔を持っており、彼の代表作である「マイティシリーズ」は「マイティクエスト」、「マイティファンタジー」、「マイティレガシー」の3作品からなる3部作で、主人公が攫われた姫を取り返すために魔王とその軍勢と戦い魔王を倒せば、一転して自分が魔王となり世界を征服、そして魔王となった勇者の息子が魔王となった勇者を倒すまでのファンタジー作品であり、ミリオンとまでは行かなくて多数の愛読者を獲得しており、凛もその一人であった。そのことを知った凛は「あの作品の作者がこんなアル中&ヤニ中のセクハラクソ親父だったなんて・・・」と落ち込んだりしたが、今では切り替えて源治の書く作品を一番最初に読めるということでポジティブに考え源治にすべての家事をやらせている罪悪感もあるので、メイド服を着て執筆のアシスタントをしている。


「そろそろ新しい作品に取り掛かろうと思ってな、それに最近お前も働き詰めだったからな、ここらで休暇ついでに泊りがけの旅行をと思ってな」


「気持ちは嬉しいけど・・・怪異狩りは大丈夫なの?」


「心配すんな、それ関連の仕事もきっちりやるさ。行く予定の湖の辺りで、最近妙な噂が流れてるからな、それの調査も兼ねてる。」


「噂って?」


「深夜に湖で時代遅れの海賊船とタコみてえな生物を見たってもっぱらの噂だ」


「それ本当に怪異なの?酔って夢でも見たんじゃない?」


「だからそれを調べるために行くんだよ、技術部も興味があるらしい、一人同行するってよ」


「事情は分かった・・・けど、泊まりだからってエロいことしないでよね」


「・・・お前って結構脳内ピンクのムッツリだよな」


 こうして源治&凛+1人の小旅行が始まった。

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