第6話

「ま・ち・や・が・れコラー!」


 深夜になっても眠らない街東京、そのビル群の屋上を源治は走っていた。


 走る源治の先には狼の頭と獣の後ろ足を持ち、全身を体毛に覆われた4足歩行をする怪異「人狼」と呼ばれるものが障害物の多いビルの屋上を我が物顔で駆けている。それを源治は走って追いかけているが傍らには相棒の凛の姿はない。


 なぜこのようなことになっているか。理由は数時間前に遡る。



 本部から任務の連絡を受けた源治は、地下室の片付けを後回しにし早速地下室から出て怪異討伐の準備を始めた。凛も怪異と聞いては源治とのわだかまりは置いておいて自分の部屋に戻り、怪異討伐のために必要な道具をコートの中に収めて表に出た。


 30分ほどすると同じく準備を終えた源治が刀を腰に下げ左腕に鎖を巻き、背中に銃を背負ったいつものスタイルで表に出てきた。


「よし、出発だ、気合い入れてけよ」


「どんな相手なの?」


「人狼だ、数は不明、正確な位置も不明で最後に確認された位置しかわからないナイナイ尽くしだ」


「なにそれ、調査部はちゃんと仕事してるの?」


「まあそう言うな、あいつらは最低限の戦闘経験しか無いんだ。そんな奴らに危険度高めの人狼の正確な位置まで確かめさせるのも酷な話だ」


 不満そうに口を尖らせる凛をなだめながら、愛用のバイクに乗れば凛も源治の後ろに座る。凛が自分の背に掴まったことを確認すればエンジンを掛けバイクを人狼が最後に確認された位置付近に向かって走らせる。


 人狼が最後に確認されたのは、今は閉鎖された廃工場であり、源治達はその廃工場から離れたところにあるビルの屋上で双眼鏡を覗き少しの間廃工場を張り込んでいると二体の人狼がどこらともなく現れた。


「どうやら、やっこさんお出ましみたいだ。人狼にしては数が少ないな、ありゃ斥候だどっかに本隊があるな」


「そうなの?」


「ああ、あいつら基本群れで行動するからな」


「それじゃあどうするの?あいつらの後尾行する?」


「いや、あいつらは鼻がいい、尾行だと感づかれて撒かれて終いだ。だからあいつらに群れのいる場所まで案内させる」

「どういうこと?」


「まずおれがひとりであそこに行って一匹ぶった切る、すると残った方は本隊にこのことを伝えるために逃げるはずだ。お前はそこを俺のバイクに乗って追え。乗れるだろ?バイクぐらい」


「そりゃ、訓練所で乗り物の操縦は一通り習ったけど、人狼はともかくあんたが目立っちゃうよ?」


「俺を誰だと思ってる、退魔部一の凄腕にして問題児、源治様だぞ。」


「まあ、あんたがそう言うならそれで良いけど・・・・」


「よっしゃ、それなら一発かましに行くぞ。ロックンロールだ」


 そして源治はと凛は一旦別れ、源治は予定通り正面から工場に乗り込み乗り込み人狼を一体を切り捨てると予想通りその場から逃げ出した人狼を追って夜の街を駆け出したのであった。

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