剣術の描写力が凄い!

 剣術の試合中に、坂本竜馬が自身の半生を振り返る物語。
 幕末の日本史が苦手で、剣道は全く知らないという小生でも面白く読むことができた。これは作者様の一本勝ち。
 この作品で見事なのは、やはり剣術の描写と、そこに自然な形で織り込まれる過去の回想だろう。
 剣道を知らなくても、二人の緊迫した竹刀のつばぜり合いや、間の取り方、剣筋の読み、踏み込む足などが、巧く描かれていて、読者を引き付けること間違いなしの読みごたえがある。
 また、この試合中に坂本竜馬が、かつての恋人とのことを思い出す場面がある。試合中に回想にふけったら……と、しらけさせない文章力と構成力に脱帽だ。しかも、竜馬とお竜の結婚話は有名だが、ここで語られるのはそれ以前に道を違えた竜馬の婚約者との物語である。切なかった。
 「本編を読んでいなくても理解できる」という作者様のおっしゃる通り、1話でも十分楽しめる作品でした。
 是非、ご一読ください。

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