剣術の試合中に、坂本竜馬が自身の半生を振り返る物語。
幕末の日本史が苦手で、剣道は全く知らないという小生でも面白く読むことができた。これは作者様の一本勝ち。
この作品で見事なのは、やはり剣術の描写と、そこに自然な形で織り込まれる過去の回想だろう。
剣道を知らなくても、二人の緊迫した竹刀のつばぜり合いや、間の取り方、剣筋の読み、踏み込む足などが、巧く描かれていて、読者を引き付けること間違いなしの読みごたえがある。
また、この試合中に坂本竜馬が、かつての恋人とのことを思い出す場面がある。試合中に回想にふけったら……と、しらけさせない文章力と構成力に脱帽だ。しかも、竜馬とお竜の結婚話は有名だが、ここで語られるのはそれ以前に道を違えた竜馬の婚約者との物語である。切なかった。
「本編を読んでいなくても理解できる」という作者様のおっしゃる通り、1話でも十分楽しめる作品でした。
是非、ご一読ください。
幕末に靴を履き、銃を片手に時代を駆け抜けた偉人。
これが、大部分の人の印象でしょう。しかし、坂本竜馬とという人は―――実は、武士と言えどもお家は豪商。姉たちに可愛がられ、苦労知らずに育った甘えん坊。武士として剣で名を上げ、剣の道を志した普通の若侍だったのです。
それが幕末の動乱に飲み込まれ、東西を駆け回り、薩長の同盟を成し遂げ、大政奉還を実現させた偉人へと成長し行く。
このお話しは、その若き日々の一コマを描いたものです。
本編は勿論、青春編のネタバレも無しの秀逸な作品。
ぜひぜひ本編へのステップに、そして青春編への入り口に御一読ください。
ハマリますよ!
未来から来た美少女剣士の剣捌きに、坂本龍馬はかつての婚約者の面影を見ます。
うら若き女性ながらも剣の達人にして「鬼小町」と呼ばれた千葉佐那子は、龍馬が江戸で剣を学んだ道場主の娘でした。相思相愛となった二人は婚約しますが、幕末という時代の波に引き裂かれてゆきます。
佐那子を捨てておきながら、別の女を妻とした冷たい男――と言われる龍馬の本心はどこにあったのか。
もしかしたらそれは、激動の時代に身を投じた英雄の辛く切ない決断であったのかも知れない。
坂本龍馬の僅かな迷いを断ち切るような、浅村咲(あさむら さき)の鮮やかな剣に痺れました。
物語の殆どが、火花をちらすような立ち合いのシーンですが、簡潔で迫力のある作者の筆の魅力に圧倒されます。