第7話 忠告
僕は眠っていたが、身体の上に何かが乗っている感覚がして目が覚めた。
「...ん」
目を開けると仰向けに寝る僕の身体の上には足を大胆に広げ座る...
「おはよう」
「フェネックさん...?
ってえっ!?な、な、何でそんな所に!」
「私ねぇ...、ふふっ」
不敵な笑みを浮かべた。
すると、上半身を倒し顔を僕の方へと
近付ける。彼女が意外と身体が柔らかい事に少し驚いたが、今は感心している場合ではない。
「な、なんですか...」
恐る恐る尋ねた。
「欲しいんだよね...
“こ ど も が”」
そのワードを囁かれた瞬間、鳥肌が立った。
「...えっ....」
「私とアライさんで育てるからさ…」
「ちょっ、とまっ、それはっ!!」
「正式には“私”と“かばんさん”の子だけどね。なに、サーバル?あの子はいいじゃない。無垢なままで」
「....」
僕はとても巨大な渦に巻き込まれている様でもがく事ができない。
「一回切り...、やってくれればいいだけだからさ...」
「ま、まだ、そんなこと...」
「大丈夫...、私が教えてあげるから...、ね?」
「ま、マジで言ってるんですか...」
「はぁ...」
嫌らしい溜息を吐く。
「かばんさん...、やろうよ...
私の夢だから...、まずは...」
フェネックは自身の上着に手を掛けゆっくりと持ち上げる。
(ヤバイヤバイヤバイ!!
どうしよう...、このままやっといて
気付かれない可能性もある...
フェネックの身体ならまあ、悪くは...
って何考えてんの!?)
彼女の臍が露わになる。
それと同時に自分の鼓動も無意識に加速する。
「フェ、フェネック...さん...
もし...、子供が欲しいなら...、僕は...」
「って、あるわけないじゃん」
フェネックは唐突にそう呟きめくり上げていた上着を元に戻した。
「えっ?」
困惑しかなかった。
「試したのさ」
そう言って立ち上がった。
「た、試す....?」
「忘れてるかも知れないけど、
ここは元々動物が住むところ...
本能的にオスの香りを嗅ぎつけて
今みたいに擦り寄って来たり色仕掛け
してくるフレンズが出てくると思うんだ。あるかどうかわからないけど、
かばんさんを奪うためにサーバルに襲ってくる可能性もある」
僕はまだ震えが止まらなかった。
「...かばんさんなら最後までダメで貫き通すと思ったけど...」
一度フェネックは申し訳なさげに咳払いをした。
「下心丸見えだよ」
「うっ...」
釘を容赦なく刺された。
「サーバルとの関係を望むならさ、
しっかりしないと...」
「はぁー...」
僕は自分に対し、呆れた思いで溜息を
吐いた。
「....もし“サーバルにも出来ないこと”があったら、言っていいよ。
博士に言われて色々私も勉強したからさ」
「それって、どういう...」
「“緊急事態用”だよ...。察せるでしょ」
(緊急事態...)
フェネックは意味深な言葉を言い残して
去っていった。
しかし、僕の“ボロ”が出てしまった。
“お人好し”過ぎる性格なのもあるかもしれない。
僕はどうすればいいんだ...?
サンドスターで元の姿に戻る...
そうすれば、こんなことは...
(サーバルに聞いてみよう。僕はどうすべきなのか)
「あのさ」
僕はサーバルの肩を叩いた。
「どうしたの?」
「僕は、フレンズに戻った方がいいのかな...」
「なんで?」
「本当の自分を受け入れられないっていうか、このままだと、君まで傷つけるかもしれないし...」
サーバルは沈黙していた。
彼女に相談するのはやはり間違いだった。
なんで僕はこうも間違った選択を何度も何度も...
「私は、昔の“かばんちゃん”も
今の“かばんくん”も、どっちも好きだよ。だから、どっちがいいかは、任せる」
「...自分で判断しろってことだよね」
(まあ、そう言うか...)
自分で尋ねといて...
結局ブーメランの様に元に戻ってきてしまった。
(僕の気持ちとして...、もちろんそれは...)
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