第4話 誘惑
単刀直入に言うと...
僕の焦点は、サーバルからズレ始めた。
あの風呂の一件以来僕の視線は本能的に
彼女を向くようになってた。
大人びた…、あの風貌が本能的に刺激を受けたのかもしれない。
僕に冷たい水を掛ければ目覚めるかもしれないが…
このままだとサーバルが焼きもちを焼くかもしれない。
今度は無理矢理彼女に軸を合わせないといけないから、大変だ。
あれ?でも、自分はサーバルは友達のままでいたいはず...
となると...、フェネックと僕がカップルになればサーバル=友達の方程式は
成り立つ事になるけど…、流石に
それは...、ちょっと...
でも、自分の友達のままでいたいの意見を貫き通すなら...
「かばんちゃん?」
「はっ!」
「ずっと、本の同じページ見てたけど、
どうしたの?」
「あっ...いや...、なんでも、ないよ」
(今のが全て心の声で良かった...)
ホッと安堵の息を付く。
もう、わからない。
自分が何をどうしたいのか。
僕達はごこくちほーの図書館に来ていた。
もちろん、ここにも、博士達の様な
フレンズがいた。
「ふふっ...、だけど、ここにヒトがやって来るなんて何年ぶりかしら?」
背後で微笑ましくそう言ったのは、
この図書館を管理しているコウノトリである。
「ねぇ、かばんちゃんだっけ...?」
「はい?」
「ちょっとお喋りしない?」
(料理を作れっていう要求よりは
楽だし…、気を紛らわすにはいいか)
「サーバルちゃん、ちょっと待っててね」
「...あ、うん...」
少ししゅんとした雰囲気だった。
人気の無い部屋で二人きりになる。
とてつもない違和感を感じた。
「ふっふふ、あなた恋してるでしょ」
「は、はい?」
単刀直入に何を言ってるんだこのフレンズは。もしかしたら、博士より面倒臭いかもしれない。
「コウノトリは幸せを運ぶ鳥って言われてるのよ。なんか、本能的に感じるのよね!」
「そうですか...」
「でも、あなた、迷いがあるでしょ?」
こっちの態度を気にせず、ズバズバと話を始める。
「本命は?」
「....」
「あぁ、ごめんなさい。迷ってるのに、どっちが良いのかなんて決められないわよね。じゃあ、こうしたらどうかしら?二人きりで...、デートしてみたら?」
「デ、デート?何ですか、それって...」
「さっき言った様に二人仲良く寄り添いながら散歩してみたりするの!それをデートって言うのよ!以外と相手の気持ちとか、自分の気持ちがわかったりするの」
「はぁ...。そうですか...」
「あんまり一人で悩み過ぎると、体に悪いわよ?気を付けてね?」
コウノトリは僕をまるで“男”として見ているような口ぶりだった。
他のフレンズにもそう突っかかってくるのか、それとも、過去に何らかの経験があるのかは、わからない。
けど、相手の気持ちを知る...、か。
「えっと...、とにかく、わかりました」
その日の夜。
僕はサーバルが完全に熟睡した事を確認した。
昼間約束した通り彼女は起きていた。
元が夜行性だから、起きていること自体は大変じゃないだろう。
「遅くなっちゃって...、すみません」
「別にいいよ。けど、頼みごとって?」
「あの...、えっと...」
気持ちを知る為だ。
間違った選択をしない為の。
「僕と...、散歩でもしませんか?」
不思議そうな顔をして僕を見つめた。
「こんな夜中に?面白いね」
でも、直ぐにその顔は笑顔へと変わった
「いいよ」
彼女と僕は、散歩と称した、デートをする事になった。
この時の、僕とフェネックの関係は
カップルと言えるかもしれない。
無意識を装って、サーバルにしてあげたい事をする。
手を握ったり、ちょっとくっついてみたり...。
星空の下で良い経験が出来たかもしれない。
やっぱり、フェネックさんは良い。
落ち着いた雰囲気っていうのが、とても魅力に感じる。
サーバルとは対照的である。
サーバルが太陽だとしたら、彼女は月だ
しかし、心の奥底に、微妙な違和感を感じた。
その違和感の正体は掴めぬままだった。
短い様で長い時間だった。
なんだかんだでコウノトリの助言が役に立った。
後でお礼をしておこう。
一先ず、今夜は気持ち良く寝れそうだ。
「フェネックゥー...」
寝言で自分の名を呼ぶアライさんの
顔を見ながら、ふと疑問が芽生える。
なんで、かばんさんはあんな事を...
......、もしかして、私の事を?
まさか...、ね。
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