第6話 変化

最近アライさん、かばんさんの事を一言も言わなくなったんだよねー。

まあ、変に首を突っ込まれるよりいいんだけど...






僕は結局アライさんに何をしたのか

聞かない方がいい事だってある。

胸の内に秘めておくのが賢明だろう








まさか....、かばんさんがあんな事になってるとは知らなかったのだ....








かばんちゃん...、私、ホントのこと知りたいな。








この体になってからサーバルには

ずっと自分の事を内緒にしてきた。

隠し通せると思っていたからだ。

船出から3ヵ月程経った時に、隠し通せそうもない事態が発生した。


声が掠れる。


この症状は風邪だと思ってたが熱がない。とういう事は...


まずい。何週間も風邪で貫き通せない。


どうしたらいいんだ?


本当の事を打ち明ける?


僕は彼女との関係を壊すまいと思っていた。しかし、もう潮時なのかもしれない


葛藤が僕の中で生まれた。







「かばんちゃん、なんか声が変だよ」


「なんだろうね...、大丈夫だよ」


微妙に低いトーンになったのは自分でも何となく分かる。

こっそりフェネックにも確認してもらった。


「ねぇ、かばんちゃん、本当の事を教えてよ」


サーバル本人がそう望んで来た。

僕は友人として本当の事を打ち明けるべきだ。


「ずっと、内緒にしてて、ごめん。

僕自身も戸惑ってたし、どうすべきか悩んでたんだ。サーバルちゃん、僕はね

元の人間に戻ったんだ」


「元の人間に?」


「セルリアンに食べられたから僕は元の姿に戻った。これが僕の本来の姿なんだよ」


「ふつーのかばんちゃんじゃん」


いや、違う。


「サーバルちゃん、僕と君は違うんだ」


「...えっ?」


「僕はね、男の子。君は、女の子。

わかる?オスとメスなんだ」


「...?」


無理も無い。ジャパリパークは全員女子しかいない。


本を用いてその違いを教えた。


「そうだったんだ...、けど、私は、

嫌いになったりしないよ?」


「え...」


「だって、大切な友達だもん...

早く言ってくれればいいのに...

私、心配で心配で...」


「...ごめん」


「色々違う所があるかも知れないけど

私は大丈夫だって思ってる...

この際だから、新しくしたほうがいい事もあるよね」


「なに?」


「かばん“くん”って言った方が良い?」


「どっちでもいいよ...」

(パークには女子しか居ないしずっと

そう言われて来たからなあ...

気恥しさはそんなにないけど)


「私の呼び名も変える?」


「サーバル...」


僕はこの時初めて彼女を呼び捨てにした


「私も、どっちでもいいかな?」


「じゃあ、呼びやすいふうに言うよ

…、ところで博士にサンドスターを貰ったんだよね。これを使えば記憶を失うかもしれないけど、もとの姿に戻れるって...」


「今はいいかな...」


そう、彼女は口にした。


「ねぇ、かばんくん」


早速、そう呼んできた。


「なに?」


「思い出したんだけど、

たしか、オスとメスってさ、“こうび”するって聞いたんだけど、“こうび”って何かな?」


「サ、サーバルはまだ知らなくていいよ!!」


取り乱した様に、慌ててそう言った。

だけど、裏を返せば...。うん、そういう事が可能になったという事だ。












(そっかぁ〜、そう言う役割があるんだね〜....

なんかいつの間にか悩み事も解決したし...、博士のミッションはクリアってことでいいねー....)



「ねえ、アライさーん」


「ど、ど、どうしたのだ?」


「かばんさんのこと、アライさん知ってるよね?」


「え、え、え、な、な、何のことなのだ??」


物凄い動揺ぶりだ。

アライさんがかばんの事を口にしない

理由がわかった。


「もう問題解決したから、そう焦んないでいいよー」


「...、そうなのか」


ホッとひと安心したかのような声を出した。


「ところで、アライさん」


「なんなのだ?」


「...一緒に育ててくれる?」


「何を育てるのだ?」


アライさんはフェネックが何言ってるのか全然理解できなかった。


「ふふっ、それはねー....」

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