るーぷのるーぷの、るーぷ

紅蛇

存在する、いろんな種類のピンク色——。

 バイトから帰宅。きゅるっと尻尾をツインテールに変身させて、お気に入りの部屋着に着替える。もこもこパープルに、外していた指輪を付ける。ピカーンッ!

 冷蔵庫から、晩御飯(いちごオレと板チョコ)を取り出して、お腹を満たしていく。けど、何も膨れない。


 お腹すいた。アナタに会いたい———。


 夕焼けは缶詰の桃。アナタの好きな、モモ。好き……。


 好きについて考えてみる。好き——。

 ダイスキを一般化させた言葉。大好き。ダイスキ。だいすき。好きだよ。好きよ。好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き———————好きの永遠ループ。


 ——永遠。えいえん。とわ。同じ漢字なのに、別の読み方を持っている——


 私。わたし。ワタシ。

 早くアナタに会いたい。相対。愛たい。好きよって呟いて、子供を作る。男女だから、できること。好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き———————好きの永遠ループ。

 私、こんなことしてる場合なのかな。早くアナタに会いに行けばいいのに。るーぷのるーぷ。好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き——————好きの永遠ループ。


 なんだか、急に死にたくなっちゃった。どうしてだろう。どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして———————どうしての永遠ループ。


 死っていうのはねー、生と同じなんだよー。

 シッテイウノハネー、セイトオナジナンダヨー。


 セイが別々で、穴があって、棒があって、差し込んで、コンセントとプラグの関係で、セットじゃないといけないのー。セット。セットになりましょ。好きよ、アナタのこと。私を愛しに来て。愛しに、アイシに、愛し合いましょ。


 腕の傷が疼く。

 痛い。痛いの。イタイの。いたいの。異体の。痛いの———。


 あーあ、今日もアナタに逢えなかった。秘密に撮った写真を眺めて、自傷行為を行う。自傷。別名——自慰行為。自分を慰める行為。痛みは、とうに消えちゃった。アナタに触れられるはずの箇所なのに、触れている人物は、自分——。違う、チガウ、ちがう、これじゃない。違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う——————違うの永遠ループ。


 私は、醜い。ブサイクで、頭も悪くて、頭の容量なんて、ゼロに近い存在なんだ。いい加減、傷跡も治らないし、アナタとも会えないし、死にたい。


 私は、愛されてない? 


 いやだ、やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ——————やだの永遠ループ。


 誰か、私を助けて……。

 醜い私は、誰の子。アヒルの子なのかも。家鴨。家にいる、鴨———。いつか、喰べられちゃうってことかな……。もしかして、アナタに——? それならそれで、嬉しい。早く私を愛しに来て、喰べて。食べて、たべて、喰べて、タベて、愛してるって呟いて欲しい。私を、欲しがって——。


 アナタに貰った(ピンクゴールドの)指輪は、左手(の中指)に飾ってある。きらきらしていて、月明かりに反射している。目が、痛いの。試しに薬指に入れようとしたけど、指の大きさが違って、入らなかった。この指にも、入れて欲しい。三百六十五日、春夏秋冬、二十四時間、私を愛し続けて。私だけのことを考えて、私だけを欲しがって、触れて、愛を育みましょうよ、ね、いいでしょ。


 サビしい。心がからっぽ。世界が、アナタに送るために撮った、白黒の写真みたいに見える。白黒。モノクロ。ブラックアンドホワイト。モノクロのモノは、一個っていう意味があるって、どこかで聞いた。一色。なんでもいいよ、だから、もう一度、私を可愛いって言ってよ——。


 私はアナタの所有物——? 嬉しい。けど、足りない。私は所有物で、愛され続ける存在で、嬲られたって、道具にだって、愛玩にだって、性具にだって、なんだってなるから、お願い……私を見捨てないで——。私のそばにいてよ——。


 心配。送ったメールに、返事がこない。何通も送ったのに……。メールでも、SNSでも、手紙も送ったのに。こない、来ない、来ない来ない来ない来ない来ない来ない来ない来ない来ない来ない——————来ないの永遠ループ。

 もう、押しかけようかな……。


 黒い膝丈ワンピを着る。両手首から、真っ赤な液体がこぼれて、巻きたての包帯を汚した。あ、わたしみたい——。軽くツインテールの結び目を閉める。きゅっ。きゅるきゅる。死にたいな——。乾いた唇を甘噛みして、皮をワンピとお揃いのネイルで剥がす。ぺろり。はぁ……死にたいな——。息をするたびに、億劫になる。何があろうと、私だけを好きでいるって、約束したのに……。嘘つき。嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき——————嘘つきの永遠ループ。


 家を出る前に、お医者様から貰ったお薬を飲む。ローズヒップティーで、喉に突っかかるお薬を流し込んでいく。せいしんあんてーざい。なんだかよくわからない、カタカナ名のお薬。お薬を、飲む。食べる。服薬。服。噴く——。急いでトイレに駆け込み、喉に手を入れる。咳を何度かして、吐き出す。痛い。いたい。イタイ。吐き切るまで、なんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんども——————なんどもの永遠ループ。

 吐き出し、涙がこぼれた。

 


 死にたいな——。



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