素敵な夫婦のドラマで「経済学」をさらりと学ぶ

個人的に、この作者さんの文章には「洗いたてのワイシャツ」のような印象があります。
さらりしていて、ほのかに柔軟剤の香りがするような。

そんな読み心地の良い文章で書かれている「経済学を分かりやすく学べる小説」がこの作品です。

経済学を学べると言っても、内容は決して難しくありません。ニューヨーク在住の若き経済学者・瑞樹博士とその妻・美緒のオシャレな日常(美味しそうな食事シーンやライトなラブシーンもあります)を描きながら、2人の会話の中で、少しずつ経済学の面白いトピックに触れていく、というスタイルを取っています。

そのトピックの選び方も、とてもバランスが良いです。

ラチェット効果、機会費用、サンクコスト、比較優位説、GDP、金融緩和、ゲーム理論……。

「仕事や日々の暮らしに応用できる経済学の考え方」
「それを知っておくことで経済ニュースを理解しやすくなる用語」

というのをトピックを選ぶ基準にしているのではないかと感じます。
いずれも、社会人はもちろん、学生でも知っておいて損はない知識ばかりです。

その上で、難しい講義まではせず、経済学の素人である妻に「こんなトピックがあるよ」「ごく簡単に言えば、こんなことだよ」といった説明をするところまでで留めているのが、この作品の良いところ。経済の話はオマケと考えて、ニューヨークを舞台にした夫婦のドラマと考えても、普通に楽しむことができます。

経済学を学ぶきっかけとして、もってこいの作品です。

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