性格も性質も違う二人の少年が大好きな女君主のために奮闘する、地に足ついたアラビアンファンタジー。
冒険、活劇、謎、魅力的な登場人物、暗い過去、一途な思い、裏切り、酔狂、そしてハッピーエンドと、王道をいく爽快感があります。
舞台は西洋風や和風ではなくアラビア風。故に読書中広がる風景が礫砂漠や枯れ谷のような砂の色で、ここがまた疾走感溢れるストーリーとマッチして、読んでいると一緒に馬で立ち回っているような乾いた風を感じます。
メインの二人が紆余曲折しつつも段々と若く瑞々しい友情を育んでいくさまは微笑ましいです。親友ではないけども、きっと任務を終えて離れてもかけがえのない仲、大試練を乗り越えた無二の仲になっているだろうと信じてやみません。
また、脇役キャラもとても魅力的でスピンオフが読みたくなりました!
躍動感あふれる第1夜第1話から目を奪われました。
カクヨム界隈では(たぶん)珍しい、西洋風ではないアラビアンハイファンタジー。
皇帝に援軍を要請するため帝都を目指す二人の少年、ギョクハンとファルザード。
ギョクハンの武勇とファルザードの知性が両輪となって困難に打ち勝っていくさま、そして旅を続けるにしたがって彼らの視野が開けていくさまは、実に爽快です。
また主人公二人のみならず、美しき女将軍ザイナブ、おしゃべりな絨毯商人(???)ジーライル、そして謎の男アズィーズなどなど、脇役のひとりひとりまで活写されて鮮烈な印象を残します。
私のようにアラビアンな世界観になじみの薄い人にこそおすすめしたいです。
ぜひギョクハンやファルザードと一緒に、広がる世界を体感してください。
武術に秀でた十五歳のギョクハン、頭脳明晰な十四歳のファルザード。
この二人が、援軍を求めるために旅をする物語です。
優秀な二人組ですが、抜けたところもあってかわいいです。
脇を固めるキャラクターたちも個性豊か。敵やモブに至るまでよく書きこんであり、人間味があります。
そして、ときおり出てくる名台詞。ごく普通の言葉を使った短い台詞なのですが、これがいいのです。この作者様の特徴です。ぜひ台詞にも注目して読んで欲しいなあ、と思います。
戦闘場面の迫力と疾走感も素晴らしいです。
ラストはこの物語らしさに溢れていますので、安心して物語りの世界に浸って楽しんで頂ける作品です。
爽やかな冒険譚、少年同士の友情ものがお好きな人に特におすすめです。
包囲された城で、十五歳のギョクハンと十四歳のファルザードは、≪勇敢なる月≫の異名を持つ女主人ザイナブから手紙を託されます。
皇帝に会い、その手紙を渡し、援軍を呼んでくるように、と。
そのとき、ザイナブは言います。「ふたり、仲良く」と。
ふたりで、この密命を成功させなさい、と。
奴隷軍人であるギョクハンと、酒姫であり頭脳明晰なファルザードは、年こそ近いけれど、まるで正反対な気質の持ち主。
出会った当初からもう……。
気が合わない。そりが合わない。気に喰わない。
だけど。
「ザイナブが大好きで、尊敬している」ということは共通していました。
仕方ない。
ザイナブさまの為に。
ザイナブさまと、城の皆、街の皆の為に。
そう思い込んで行動をするふたり。
そのふたりは。
一緒に旅をしていくなかで、気持ちが変化していきます。
互いが育ってきた環境や、思い描く未来。過去の境遇や現在の状況。
そんなことに気づきながら、ザイナブの言うとおり「ふたり」で使命に携わっていきながら、「世界」の広さと、多様な「価値観」に出会います。
さて。
二人は無事、援軍を呼ぶことができるのか。
ザイナブから言われた通り、「仲良く」できるのか。
物語は今日、完結いたしました。
ふたりの結末は、ご自身でご確認を。
(※ものっすごいハッピーエンドです)
このおはなし。
一話一話が読みやすく、また、難しい語彙には振り仮名や注釈がさりげなくなされています。
「異世界ファンタジーは好きでも……。アラブ系の話かぁ」
という、心配は無用。全く、無用。
いける。読める。楽しめる。
個人的には。
この作品。
中・高校生に読んでほしいなぁ。
ギョクとファルの旅に一緒に同行してほしい。
そしていろんなことを追体験してほしい。
そんな風に思った物語でした。
少年達は使命のため、砂漠を旅する。
そのうちで目にする大人のこと、世の中のこと、そして様々な困難。
狼のようなギョクハンと、猫のようなファルザードはいいコンビで、二人で力を合わせて苦難を乗り越えてゆく。
その姿に胸打たれるのは勿論のこと、しばしば挟まれるアラブ世界の通俗や言葉などにも目を惹かれます。
二人の少年に強くスポットを当てた冒険活劇。レビュータイトルの通り、そんな印象を受けます。
とても前向きで、ひたむきで、そして清く、生きる喜びに溢れている。
ラストを迎えた今、私の目にも見えているように思います。
砂漠にずかずかと刻まれたギョクハンの、それを追うようにちらちらと刻まれたファルザードの足跡が、どこに向かって続いてゆくのか。
主題を難解な言語や小手先の専門用語での修飾で覆い隠すことのない、目が洗われるほどに素敵な作品です。
この作品は、きっと作者様が、読者に、そして己自身に、ギョクハンやファルザードのようにひたむきに、まっすぐに向き合った結果生まれたものなのでしょうと想像します。
隣国からの攻撃を受け、城が包囲された。殺された将軍の娘で《勇敢なる月》の異名を持つザイナブは、皇帝に援軍を請うべく、2人の少年に手紙を託して脱出させる。
彼らの名は「ギョクハン」と「ファルザード」。
馬に乗ったまま弓を射る技術では右に出る者がいないと言われる奴隷軍人のギョクハン、15歳。美貌と賢者に優る頭脳を併せ持つ酒汲み奴隷のファルザード、14歳。
たくましく頑固な「狼の子」のような少年と、愛らしくおしゃべりな「猫の子」のような少年。2人は砂漠を越えて、帝都を目指す——。
中世アラブ風の世界を舞台に描かれる少年たちの冒険譚です。
砂漠の夜の戦闘、出会った怪しげなキャラバン、辿り着いた街での侠客退治……。
2人は力を合わせて、いくつもの危機を乗り越えていきます。
また、それまで奴隷としての役割に縛られていた彼らが、初めて外の世界に出て、自分たちで考え、行動する。知らなかった世の中の現実を知り、戸惑う。その冒険の中で少しずつお互いを深く知り合い、愛と見まがうような、少年同士の友情が芽生えていく。
中東の歴史と文化に精通する作者さんによる、リアリティのある舞台設定。
そこで繰り広げられる、時にコミカル、時にシリアスなやりとり。
熱い冒険と戦いに胸躍らせ、少年の心の触れ合いにじーんとする。
物語を読む楽しみが存分に詰まっている作品です。