いい(※触れたいところが多すぎるのに、どれもうまく説明できそうにない)

 レビューを書きたいと思って筆をとったのに、何を書けばいいのかまるでわからない。
 言いたいことがいっぱいあるのに、文章にしてみるとどれも違うんです。ちがうそうじゃない、ってなる。結局「いいから読んでみて!」ってやりたくなる、そういう単純には言い換えのきかない面白さ。どう言えばいいのだろう。以下、レビューのふりした一読者のなにかひどく迷走したなにかです。

 例えば、登場人物のひとりであるヨゾラさん。この子がとてもかわいいのです。間違いなくかわいいのだけれど、でも違う。単純に「かわいい」という形容だと、言いたいことの一割も言えていない。そんな感覚。だって「かわいい」っていろいろあるもんね、と、もうそんな次元ではないのです。
 彼女の言葉や、振る舞い。どれをとってもものすごく自然で、とても生き生きしていて、生々しい。作られたキャラクターではなく、一個の実在としての魅力を感じる。と、説明するとしたらたぶんそんな感じになって、でもこういうの長々言うこと自体がもうなんか違う、それくらい自然でつまり「もういいから読め」ってなります。
 そしてその人物の自然さは、なにもヨゾラさんに限った話でなく。全員がしっかりとした存在感を持っていて、当然キャラ立ちはしているのだけれどでも「キャラ立ち」って言葉だとなんかニュアンスが違う、そうじゃなくてもっとこうああもういいから読んで、という、もはやレビューの体をなしていませんがでも自分のせいじゃありません。この作品が悪い。面白いのがいけない。

 もうどうにもならないのでざっくり紹介するとすれば、異世界ファンタジー作品です。がっつりどっぷり浸れるファンタジー。魔法とかのわくわくする設定がいっぱいで、それが結構なテンポでもりもり出てくるのに、全部自然にもりもり楽しめてしまう。するりと物語世界に乗っけてくれる。自然で優しい文章と、そして五感に訴えかけてくる描写の鮮やかさ。
 ストーリーに関してはあえて触れませんが、保証します。読みたいもの、きっと我々がファンタジーに求めているもの。しっかりきっちり詰まってます。事実、第一部のクライマックス付近、のめり込みながら一気に読み進めました。

 ここまで書いたんですがなんかもうやっぱり全部違います。うん違うそうじゃない言いたいこと全然言えてない。そうじゃなくてあの、もっと、こう、自然で、優しくて、こう、いい。とてもいい。本当、どうやったら「この感じ」が伝わるのか、自分にはまるでわかりません。わからないので開き直るのですけれど、こんなの説明できなくて当然です。
 別の言葉で説明なんかできない、そういう面白さこそきっと『小説の面白さ』なんだろうなあと。
 この作品を読んで、そんなことをぼんやり考えました。だから読もう。読んで。ぜひ。

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