文字から景色が見える人へ…

 独白形式で描かれている物語は、情景に関しては本当に必要最低限度の事しか書かれていないのですが、そこに私は引き込まれました。
曇天の事、恋人の事を語る「私」が、どういった人なのかは分かりません。男性とも女性とも書かれておらず、「私」という一人称から女性かと思えば、「思春期の女の子の生理みたいだ」と言う一文から、男性のようにも思えます。
 愛した相手が男性とは明かされていますが、これが同性愛であろうと異性愛であろうと、どうでもいいと思うくらいに、この物語からは透明感や純粋性を感じ取れました。
 窓から空が見える部屋としか物語からは読み取れないのですが、その文体から、部屋のイメージが私の頭には溢れていました。壁は白いのだろうなとか、床は無垢材で、窓にはカーテンよりもブラインドだろうか…などなど。
 短い物語であるからこそ、この想像力が働くのだと思います。

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