圧倒的な構成力。

 プロローグからエピローグまで一気に読み切ってしまいました。楽しい物語をありがとうございます。
(以下本編のネタバレを含むレビューとなります)

「異世界転生もの」というジャンルが十分に成熟し、幾つものテンプレートとも言えるお約束が存在し、私たちは緩い共通認識として楽しんでいます。それらをCスキルや定石という形で展開するエグゾドライブは、その複雑なルールや状況設定を驚くほどの分かりやすさと説得力でこの与太ホビー世界観を納得させてくれました。
 この素晴らしい発想の時点で勝利していると言ってもよいのですが、この物語で私が何より圧倒されたのは、緻密に練られたのであろうその構成です。
 宇宙人が存在する確率はゼロではない。なぜなら私たち地球人が存在するから。それでは、異世界への転生が可能となっている作中世界について、その世界へ転生している者はいないのか。そういった揚げ足取りとも言えそうな疑問に対して、この物語はことごとく答えを用意しています。
 なぜ、ドライブリンカーなどというオーバーテクノロジーなゲーム機が開発できたのか。なぜ、エグゾドライブできる異世界は全てが滅亡の危機に瀕しているのか。なぜ……。
 こういった作中世界の説得力について、作者さんが真摯に向き合ったのだろうなと私が勝手に確信したのは、エル・ディレクスのCスキルに【倫理革命】の文字を見つけたときです。だからこその、ホビーもの世界観なのだな、と。

 また、キャラクターが非常に魅力的で、その役割の配置も絶妙でした。
 個人的には黒木田レイが可愛すぎて純岡シトともども末永く爆発しろと祝福したいです。
 それにしても星原サキの使い方が上手い。典型的な熱血主人公の幼馴染というヒロイン力。理解力の高い初心者という成長性。ほとんど主役を張れるだけのポテンシャルを、全力で物語のスムーズな進行につぎ込んでいるハイパーモブとも言える活躍が大好きでした。

「激闘!異世界全日本大会編」と銘打ってあるので、次回作にも大きく期待しております。
 最後に改めて、楽しい物語をありがとうございました。

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