心揺さぶるスポーツドラマ

心を搾られるほどの瑠佳の感情が痛いほど伝わってきました。
姉・瑠奈への圧倒的なまでの劣等感が如実に描かれ、更にはオーバートレーニングをしてしまい、遂には休養を言い渡される瑠佳の心情が、胸を締め付けます。

同時に、姉・瑠奈の優しさが、瑠佳の心に浸透するにつれて、瑠佳が忘れていた夢や滑ることを楽しむ喜びを思い出していくさまは、心打たれます。

記録という網に絡め取られ、それにばかり目がいき、そして行き詰まる。
スポーツをしてきた人であれば、誰もが一度は陥る心理を巧みに表現しつつも、そのスポーツに惹かれる心理も同時に描かれている本作は、スポーツ小説のお手本のような作品です。

また、本作はスポーツ小説でありながらも、心理描写と人間関係が克明に描かれた人間ドラマでもあります。
だからこそ、スケートを知らない人でも入り込みやすく、引き込まれる作品に仕上がっています。

是非、色々な人に読んでもらいたい、素晴らしい作品だと思いました。