第2話 溶け落ちた疑問
銀の鍵
其は持つものを窮極の門へと誘う物
宇宙の外側へ導くもの
外なるソラに繋がる事、其れすなわち、すべてが滅び、作り直されることである。
「先日の銀の鍵の話についてですがどう思います?」
1人の男が言う
「素晴らしいと思う、今までの宇宙観がすべて覆された。まあ、それもこれも私の発表した剛体理論のおかげなのだがね。」
自慢げに語る男は数々の理論を発表し、人類に必要と判断され、4回の延命をした天才だった
「でも、ブラックホールに少量のダークマターを加えるとワームホールができるみたいな話が昔ありませんでしたか?」
「加えるも何も宇宙空間にほぼ均一にあるものを吸い込まず、どうやって星々を吸い込むっていうんだ?」
「それもそうですね。」
其の疑問は消え去る
「それはともかく、私はこれから忙しくなる。なんてったって銀の鍵には剛体を使うのだろう?それなら私が必要だろう。ラボは任せたよ。」
「了解です、所長」
人類の叡智であるラボを任されるなんて光栄な事ではあるがこの御時世、ほっといた所で何をすることが出来るわけじゃないので管理責任とかいらないのだけれども。
「銀の鍵…ねぇ?」
発表されたその理論は瞬く間に世界に広がった
危険視するもの肯定するもの、色々あるが危険視する内容の殆どが良くある時代錯誤のオカルト理論
当然そんなものに耳を傾けるものはなく目を向ける者はいなかった。
することも無く暇だった為そのオカルト記事に目を通してみる。
銀の鍵は世界を滅ぼす
あー、出ましたことある事に世界を滅ぼしたがる人
内容はーっと
1000年も昔の作家、ハワードフィリップスラヴクラフトの著書にこんなものがある
銀の鍵だ
ここまで読んであーまたどうせこじつけだろうなと思い記事を閉じかけるが最後まで読まずに切るのも勿体ないと思い読み続ける
その作品には奇妙なアラベスク模様に表面が覆われた、長さが5インチ近くある大きな銀の鍵。
銀の鍵の特性を利用することで、連なる時空の門を開くことができる。
と書かれている。銀の鍵計画と似通っているではないか。
いやただそこから名前とっただけだろ、と思いつつ
ラヴクラフトの書いた作品に登場するクトゥルフ神話では見ただけで発狂してしまうような神性が数多く登場する。
そのなかに銀の鍵と深く関係する神性が1柱ヨグ=ソトースである。
ラヴクラフト全集6 134頁より抜粋
それこそ果てのない存在と自己の<一にして全>、<全にして一>の状態にほかならなかった。単に一つの時空連続体に属するものではなく、存在の全的な無限の領域―制限をもたず空想も数学もともに凌駕する最果の絶対領域―その窮極的な生気汪溢する本質に結びつくものだった。おそらく地球のある種の秘密教団がヨグ=ソトースと囁いていたものがそれだろう。これは他の名前を数多くもつ神性であり、ユゴス星の甲殻種族が<彼方なるもの>として崇拝し、渦状銀河の薄靄めいた頭脳が表現しようのない印でもって知っている神性である―しかしカーターは瞬時のうちに、こうした考えがいかに浅薄皮相なものであるかを悟った。
ヨグソトースは時空と空間を超越しており現代科学でいう高次元に似通っている。質量に囚われず四次元的な存在であると言える。
また、魔術師たちはヨグソトースを手に入れることで神の座へと至ろうとしたともある。
つまりどういう事か?銀の鍵計画は人の身で神の座へ至ろうという計画なのである。そんな冒涜は神が許さない。
おっとだんだんオカルト感増してきたぞ?
神からの罰が下され宇宙は滅ぶであろう。
まあ、予想どうりのオカルト記事ではあったな、予想どうりすぎて清々しい。
ただ、そこである一つの疑問が生まれる。
ラヴクラフトは四次元とは時間と空間を超越した宇宙の外にあるものだと認識していたという事か?当時の科学では宇宙は11次元から成り立っているという宇宙ひも理論が一般であったであろうに科学者ではないいち作家にそんな発想が生まれるのだろうか?そもそも観測する方法を持っていなかった人類に宇宙の外という物は無いものとして扱われていたはず…
まさか超高度の頭脳を持っていて高次元や時間や空間への接触を辞めることを啓発していたのか?
しかし、アインシュタインの一般相対性理論やポアンカレ予想など宇宙の心理に狂気的に迫り続けた人類は発展し続けた。まさかヨグソトースが人類を狂気で操って…ってそんなオカルトがあるわけもないか。……もうちょっと調べてみるか。
meltdown マッチョウサギ @mucho-rabbit
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