贅沢な大傑作

現代の強豪高校剣道部に所属する5人が幕末の京にタイムスリップしてしまうところからこの物語は始まります。
タイムスリップした先でいきなりこの国の未来を占う重要な一局面に居合わせた彼らは、図らずもそれに携わってしまい、
以来大きな歴史の奔流に身を投じることになります。

人気ジャンルとして定番とも言えるタイムスリップものですが、凡手ならば歴史の改変を紙一重で避け続ける展開になるだろうところを、
作者はむしろ積極的に登場人物を過去の出来事と関わらせることによって、「未来が変わるかもしれない」という興奮を読者に与えています。

史実でのビッグネームである坂本龍馬、岩崎弥太郎、新選組の面々などの登場は嬉しく、作者の豊富な知識に担保された立ち回り・セリフ回しが心憎いです。
未来からやってきた剣道部の5人もそれぞれに代替不能な魅力があり、また一人ひとりに「見せ場」が用意されている点に作者のキャラクターへの愛を感じます。
登場人物は、男も女もみんなかっこいいです。それも単に外見的なかっこよさではなく、内面からにじみ出るようなかっこよさです。
見せ場ごとに、新たなキャラクターの魅力が溢れ出て、何度も「かっこいいな」と心の中で呟いていました。

そして彼らが剣道部であるということからすでにお察しの通り、剣劇のシーンが随所にあり、この作品を盛り上げます。緊張感あふれる一瞬に、手に汗握ること間違いなしです。

美少女、イケメン、SF、歴史、バトル、友情――。
小説を構成する面白さの粋を集めたような、そんな贅沢な大傑作です。
驚異的な面白さの守備範囲と圧巻のクオリティを、是非ご一読ください。

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