企業の営業について、未経験者の私にも解かり易く描かれた物語です。
読みやすい文章は勿論、人物の個性が読み手を引き付けるでしょう。
サクッと読めてしまいますが、奥の深さは相当なモノです。
私は企業営業の世界は全然知りませんが、恐ろしい世界だと思いました。
ドラマや映画で実写化すれば、世間を賑わす名作になる予感を感じます。
完成度の高い物語なので、読み応えバッチリでした。
どうぞ、怖いもの見たさに覗いてみて下さい。
あなたの知らない世界が待っているでしょう。
最後に……作者様に一言。
あなた様は天才ですか? どうやったら、こんな不気味な物語を紡げるのですか?!
スマートニュースのコンテストでまさかホラーに出会うとは……!
しかも、幽霊が出てきたり次々と人が殺されたりという普通のホラーではありません。
殺されるのは人間ではなく「会社」なのです。
オカルト成分は一切なし、一人の人間の異常なまでの主人公への執着がホラーを生んでいます。
彼の名前は杉浦左京、主人公の中での呼び名は「父さん」。
父さんが主人公の新島君を執拗に追いかける理由はわかりません。
なぜ彼に大手企業を次々と追い詰める技量があるのかはわかりません。
けれど、ホラーですからそんなことはわからなくてもいいんです。
背景が見えなければ見えないほど、理不尽であればあるほど恐怖は増していくのですから。
特に最後の畳み掛けるような恐怖感と読後の後味はホラーの王道とも言える展開だと思います。
夏に先駆け、ひんやりした感覚を味わいたい方はぜひお手に取ってみてください。
○○ハラスメント。日本人が金持ちだったころには、あまり使われなかった言葉ですが、今では世間的に定着しました。セクハラ、パワハラ、モラハラの他にスメハラ、ブラハラ、カラハラなんてのもあるらしく、その種類は数十に及ぶとか。職場だけでなく学校やプライベートでも使われるそうで個人の権利と立場は随分と守られるようになりました。
もちろん、社員の言い分を全部聞いていると立ちゆかなくなるのが企業ってもんで……そのへんは難しいですね。最近は人を叱るのにも苦労する御時世となり、ちょっと熱心に指導するとパワハラだと言われる始末。でもねー、偉い人たちがやりたい放題やってた時代もあったわけで、そのころに比べりゃまともな社会になったのかもしれません。まァ、世の中全部が“脱ハラ”したわけではないのですが。
あ、ちなみにラーメン好きな私が理解できないのはヌーハラ(ヌードルハラスメント)なんですよ。いいじゃねぇか! 麺をすするとき音くらいするだろ! と言いたくなるのですが、耐えられない人には耐えられないらしく……豪快にかッこむから美味いんじゃないかなァ? え?駄目ッスか? 行儀悪いのかな俺?
本作『父さん、会社を倒産させたんだ……』。父さん、とは戸籍上の父親ではないのですが、とある理由で主人公の譲くんから父さんと(陰で)呼ばれているお方。本名は杉浦左京……え? どっかで聞いたような名前だな、ですって? それね、たぶん気のせいじゃありませんよ。日本人なら誰でも知ってる国民的作品を上手にパロるのが作者、叶良辰さんの芸風ですもん。
父さんは権利の主張力と保身の技に長けた人物。でも英語は苦手(笑)。おそらく本編以前から会社クラッシャーだったみたい。それに振り回される譲くんの苦労と苦悩を描く本作はリアリティある取引、人間描写を基調として意外と(失礼!)シリアスに話が進みます。もはや不死身のモンスターと言ってもさしつかえない父さんの姿に恐怖してしまう。“お仕事サスペンスドラマ”と言って良いでしょう。
ああ、そういえば父さんの中の人はサスペンス作品の常連でもありますねぇ⤴(ここで何故か語尾が上がる)。実は私、父さんの中の人のカリフォルニアコネク○ョンという曲がカラオケの十八番でして……それを本物より上手く歌える(笑)というのがささやかな自慢だったりします。
でも若い人は父さんの中の人が歌手だったことを知らないらしく「誰の歌?」「え?あの右京さんの歌なの?」「ポイズンのほうなら少しだけ覚えてるw」「つか、口でいうほど上手くないじゃん」と返ってくる始末。個人の権利が認められたこの御時世、若者がおじさんに対して“言いたいことが言えるこんな世の中”(笑)になったみたいです。ジェネレーションギャップというやつですな、わははは……(泣)
……あれ? なんでこんな話になったんでしょう? 本作は某刑事編とも、某特命係とも、まったくこれっぽっちも全然関係ないはずなのに。妙ですねぇ⤴(笑)
コメディの仮面をかぶった社会派ホラー(けっこう怖いんですよ、これ)ともとれる本作は現在、第二章が終了しており、いよいよ最終章に入るとのこと。今後どうなるんだろ? 父さんにはなんらかの謎がありそうで譲くんも疑問に思っているようですが、それがあきらかになる展開かなぁ? 叶さんの一人称小説は視点が動かないので、譲くんが父さんの過去に迫っていくのかも。そして血で血を洗うような凄惨な対決に?
ひょっとしたら、どっちかが死……いやいや、考えないでおこう。これはお仕事モノだからね。正々堂々と口喧嘩を制したほうが勝者ですよ、うん。
でも……
「あ、譲くん。最後にひとつだけよろしいですか? グサッ……!」
追いつめられた父さんならやりかねん(汗)。キレると何やらかすかわからんとこあるし。
つか逆の展開もあるかも……
「左京さん……グサッ……!」
「君に刺されるなんて、あ〜、お恥ずかしいったらありゃしない」
これは、さすがに無理があるか(苦笑)
この作品はアメリカから来て、日本で就職をした優秀な主人公譲さんとその上司の左京さん(通称父さん)の話なのですが…。ページをめくる度に、とにかく主人公が骨折り損な小説と言ってもいいほど、譲さんがとにかく報われないのです!その原因は、まさかの上司父さん…!?
始めは笑いが止まらないくらい噛み合わない譲さんと父さんですが、第1章を読み終えれば、少しばかり父さんの本性ににわかに恐怖を覚えるのではないでしょうか。少なくとも私は読めば読むほどだんだん恐ろしくなってきました(笑)
ここまでとは言わずにも、もしかしたら現実にこのような上司がいるかもしれません。そんなとき、どうしたらいいか譲さんが教えてくれそうです!(笑)
色々書きたいことがありすぎてまとまりませんが、是非1ページ読んでみてください。読み始めたら絶対に止まりませんので!
「父さん」と「倒産」って、駄洒落(笑)……とニヤけながら読み始めたら、とんでもない怪作でした。阿鼻叫喚の衝撃展開、戦慄のホラー。
一話目からもうヤバい。この「父さん」、相当な危険人物だとわかります。まぁ、思わずツッコミ入れながらも、まだ笑って読めるんですよ。初めのうちは。
でもね……話が進むごとに、ヤバさがどんどんスケールアップしていくんです。
こんな人、いるわけない。でも……案外いたりして。いや、結構いるかも………? と思わせる嫌〜なリアリティ。ぞわぞわする薄気味悪さが蓄積していき、震えがくるほどの恐ろしさ。
おそらく皆さま、無理難題に四苦八苦する主人公を応援しながら読み進む筈です。しかし徐々に声援は「頑張れ」から「負けるな!」、そして「もういい、逃げろ!」、最後には「神様、たすけて!」という悲鳴にも似た祈りへと変わっていくことでしょう。
祈りの先に待っているのは、救いか、或いは絶望か……
衝撃の結末を(マジで衝撃です)、そして「父さん」の恐怖を、存分に味わっていただきたい。