生も性も、語る口も持たない虫たちの叫び

 冬を越えて。
 春が望むものは。

 夏の終わり。
 来たる秋。

 最後の言葉は、実りをもたらすことのない。
 生も性も、語る口も持たない虫たちの叫び。

 それは――

 季節を幾つ巡っても、きっと耳の奥底にこびり付いて離れない夏の残響。
 羽音のように耳障りな音、抜け殻のように乾いた日常、唇のようにひび割れた人間関係。
 そこに差し込む青春の光、伸びる歪な影。

 ああ。
 渇望の果てに、辿り着いた真実でさえ、誰かを救うことは出来ないのか。

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