その美少女、凶暴につき。
むむ山むむスけ
第1話 その美少女、凶暴につき。
俺は近所でも名の高い、
フダ付きの
俺の弟なんて今ではチーム『
そんな俺が仲間ウチでの飲み会の後、
フラフラと女の家に行こうと
道を歩いていた頃…
一人の女子高生が人通りの少ない
細い路地に入って行くのが見えた。
こんな時間に
しかも女一人で…
塾かなにかの帰りだろうか。
時刻はすでに23時を過ぎている。
チラリと見えただけだが、
か細い体に長く腰まで伸びた金色の髪が
ものすごく綺麗にサラサラとなびいていたのが印象的だった。
『こりゃあ、かなりの
こうして俺は予定していた道程を大幅に変更して、その女の後をついていく事にした。
路地を曲がったらすぐにその女を見つける事が出来た。
こんな時間にこんな人通りの少ない路地を
女一人で歩くだなんて…
まるで自ら襲ってくれと言ってるようなモンだぜ。
俺は暗闇に身を隠しながら、
足音を立てないようにゆっくりと
女に近づいて行く。
女はあいにく
もちろん女が
女が電話の途中で悲鳴をあげて、電話相手に通報でもされたらたまったモンじゃないからな。
だから俺は女の電話が終わるまで
ひたすら静かに後をつけていく事にした。
万が一電話が終わらなくても
このままついて行けば
この女の住んでいる家が分かる。
家さえ分かれば
今日もし逃してしまっても
これからは待ち伏せのし放題だ。
俺が仲間ウチで呼ばれている
『暇を持て余した粘着質のハイエナ』
という異名を誇っているのも、
このしつこさが由縁となっている。
俺は女を後ろから襲う機会をうかがう為に
女に近づきながらそっと電話の内容に耳をすませた。
「そうそう!そうだよ~!
その時ミカがさァ…そうそう!本田先生にあんな事言うから私笑っちゃった~!!」
電話相手は友達だろうか。
女は自分が狙われているというなど
気がつく様子など微塵もなく
相変わらず
キャッキャキャッキャと騒いでいる。
…にしてもこの女、
残念ながらいまだにこの女の後ろ姿しか拝めていない状況だが、声を聞いただけでもこの女がかなりの美少女だということが容易に想像ができる。
そもそもその笑い方自体も
その辺の女子高生に比べてかなり上品だ。
その上品で可愛い笑い声を
俺が泣き叫ぶ声に変えてしまうのが
今から楽しみだゼ!
俺はペロリと舌なめずりをしながら女の尾行を続ける事にした。
「あはははは!!そうそう!
今?今は習い事の帰りだよー!」
相変わらず楽しそうに話している女。
やっぱり習い事だったのか。
可憐な君の事だから、その習い事はお花かな?お茶かな?
何にせよ、こんな時間に女の一人歩きは危ないゼ、お嬢ちゃん。
そんな事を考えながら俺は女の後をひたすら着いていく。
歩くたびにゆれる長い髪と、スカートの下から覗いている白く細長い足に思わず見とれてしまう。
「…ってか明日ヒマー?
明日もこの時間に電話したいんだケド!!
あはははは!やだァ~ 」
楽しそうな会話が続く中、
女が暗い夜道の中からわずかに明るい外灯の下へと差し掛かった瞬間、女が
えらい長電話だな。
一体どんな子と話してるんだ…?
友達か…?
俺がそんな疑問を抱きつつ身を潜めたまま、女との間合いを詰めてみた瞬間…
女が耳に当てている
その声を聞いた瞬間…
俺は口から心臓が飛び出してしまうくらいに驚いた。
なんと俺はその電話相手の女の声を
よく知っていたのだ。
その声を聞いた瞬間、
俺はその女の電話相手が誰なのかが
すぐに分かった。
『ピッ…ピッ…ピッ…』
規則正しい機械音と共に流れてくる
その俺のよく知っている女の声が、俺の耳を捕らえたまた徐々に鮮明となっていく。
その電話の相手こそ…
『…ポーーーーン…
午後23時46分52秒をお知らせします。』
『時報』だったのだ。
この女…
さっきからずっと
友達なんかと話しているのではなく
『時報』に向かって一人でしゃべっていたのである。
その事実に気づいた瞬間、
俺の全身は強く強ばり、両足が動かなくなるほど激しく震えだした。
電話口から流れ続ける機械音…
『ピッ…ピッ…ピッ…』
「も~!ミカってばァ~」
『午後23時47分48秒をお知らせします』
「そんな変な事ばっかり言わないでよ~!」
相変わらず女は楽しそうだ。
無機質に流れ続けるアナウンスに対して、まるで親しい友人かのように一人で抑揚豊かに話しかける女性…
そんな異様な光景を前に俺が動かなくなってしまった両足を必死にひきずりながら、気づかれないように立ち去ろうと静かに振り返った瞬間…
『午後23時48分ちょうどを
お知らせします。』
俺の真後ろで時報が鳴った。
その声はあまりにも鮮明で、
そして先程よりもかなり大きな音量だった。
俺が恐る恐る振り向くと…
そこには青白い表情で
髪を振り乱して白目を剥いたまま
ブツブツと呟いている
金髪の女が立ち尽くしていた。
「ぎぃやぁぁぁぁ~~~~ッッ!!」
俺は今までに出した事のないくらいの悲鳴をあげて命からがら家まで帰ってきた。
どうやって家へと帰って来たのかは覚えていないが、この日の夜の事は
もう決して一生忘れる事はできないだろう。
あの女は…
一体何者だったのだろうか…?
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