「絶対の他者」であろうとした?

 簡潔で明瞭な文章。意外性に満ちたストーリーライン。緻密でリアリティある設定。傑作である。
 ニュータイプとか人類補完計画とか、まぁそれ系の試みが世の中いろいろあるわけだが、それを感情論ではなく冷徹な論理でいともたやすく否定してのけた点が印象的な作品。
 自分と相手の思考が混じり合った際の表現が非常に面白い。一人称に対する挑戦、と言えばよいか。他にもメタ的な仕掛けが盛り込まれており、最後までだれることなく読了できた。

 最後まで読むと、大きな謎がひとつ残る。
 これは個人的な妄想だが、相互の不理解があるから不和は生まれ、しかし相互の不理解があるから人は孤独ではない。少なくとも、孤独ではないと思うことができる。
 ゆえに主人公は、

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