思念放射という犯罪が頻繁に起きるようになった近未来を舞台に、思念放射犯罪対策官(カウンターテレパス)である主人公の活躍を描くSFミステリー。
薬物中毒者が自分の思考を周囲にまき散らし他者の精神を汚染する、思念放射というアイデアが非常に秀逸。
彼らと思念放射犯罪対策官(カウンターテレパス)の互いに思考を侵食し合う戦いの様子は、小説ならではの表現が存分に盛り込まれていて読んでいて一気に引き込まれる。
また、主人公のエドが好むスムージーの描写などから、この世界の設定をわかりやすく読者に伝えるなど、設定の見せ方も非常に上手い。
秀逸なのは設定や文章力だけではなく、ストーリー自体にもある仕掛けがされており中盤からの展開は読んでいて思わず「あっ」と声を上げてしまった。
思念放射に関わる一連の事件の謎も魅力的だが、主人公のエドが「通常は平均一年で潰れると言われる思念放射犯罪対策官(カウンターテレパス)を、なぜ六年間も続けることができたのか」という謎も実に興味深く、物語を最後まで興味深く読ませてくれる。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)
簡潔で明瞭な文章。意外性に満ちたストーリーライン。緻密でリアリティある設定。傑作である。
ニュータイプとか人類補完計画とか、まぁそれ系の試みが世の中いろいろあるわけだが、それを感情論ではなく冷徹な論理でいともたやすく否定してのけた点が印象的な作品。
自分と相手の思考が混じり合った際の表現が非常に面白い。一人称に対する挑戦、と言えばよいか。他にもメタ的な仕掛けが盛り込まれており、最後までだれることなく読了できた。
最後まで読むと、大きな謎がひとつ残る。
これは個人的な妄想だが、相互の不理解があるから不和は生まれ、しかし相互の不理解があるから人は孤独ではない。少なくとも、孤独ではないと思うことができる。
ゆえに主人公は、