戦って守れ。戦った、そのあとは。

南宋の城市・襄陽に、金国の大軍が押し寄せてきた。
趙萬年(阿萬)の属する趙家軍は、地元の兵力とともに籠城して戦う。

漢文超訳も読んでいたので、
西暦で言えば、1206年末から1207年にかけて、
三ヶ月間の戦闘だということは、読者の私は知っています。

しかし、この小説での趙家軍は、勿論そのことを知らない。
籠城がいつまで続くのか。自分たちは本当に勝てるのか。
考えてしまったら押し潰されそうな恐怖でしょう。

一方、攻める金軍も、敵地での戦がいつまで続くかわからない。
超訳は襄陽側の記録なので、襄陽が勝てば単純に喜べましたが。
暴力で支配する父に圧迫される道僧。
美しく苛烈な婚約者、多保真。
危ういほどに純粋な徳寿。
彼らの為人を知ると、ただの敵、ただの数ではなくなる。

それでも、戦は始まってしまう。
失われてはいけないものが、失われてしまう。

この戦で両軍、何か得たものはあったのだろうか。
終わった瞬間、阿萬とともに叫びたくなるような、激動の連載でした。
お疲れ様でした。

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