かけおちて六畳一間
おれの暮らしてた場所ではこんなことはなかった。雪はつめたいものではなく常に生のにおいを帯びて、あたたかく世界をとりまいていた。このおっかない音はなに? 木枯らし? 信じられない、ああ、つまさきがちべたいよう。
「靴下はけばいいだろ」
ぱさ、と腹の上に一対の布が放り投げられる。なくしたと思っていた縞柄。ベッドの下にあったけど、と渋い顔の同居人に、上目遣いで言ってみる。
「はかして?」
「そのくらい自分でしな、もう王子様じゃないんだから」
おれに足を与えて地上に連れ出した魔法使いは今日もつれない。ふわもこの靴下に免じて許しておくけど。素足に感じる靴下の感触はくすぐったくて、海の底にいたころは知らなかった。
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