草の汁
へたくそ、と笑って、姉さんがカラスノエンドウの豆をちぎり、爪で先端を落として笛を作る。ぼくのと違って芯のある音が鳴る。みごとなものだ、だから聞かずにはいられなかった。
「どうしてオーボエやめたの」
「言ったっしょ。受験勉強しなきゃいけないから遊んでられないの」
遊びにしちゃあ真剣だったように思うけれど。
姉さんは手が抜けないのだ。豆笛だなんてたあいのない草遊びにもそう。なるたけ太った豆を選定し、慎重に細工する。いつか、オーボエのリードを手ずから作っていたときと同じ顔だった。
草の汁が姉さんの親指のたこをあおく染めている。あれは存外しつこくて、きっと手を拭ったくらいじゃ消えやしない。
2017/5/5 #Twitter300字ss(@Tw300ss)
第四十二回 お題『遊ぶ』
300字SS集 まゆみ亜紀/八坂はるの @LittleLessLeast
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