牛の横で牛肉を食う。動物の国へきてしまった人間は何を持ち込んだのか?

戦時中のベトナムから、獣が住まう異世界――動物達の国アトラムに来てしまった、ニンゲンの話。
あらすじはシンプルなのですが、読み進めると、この物語が圧倒的なパワーを持っていることに気づかされます。

唯一の人間であり、記者の男イイヌマ ミチアキは、この国で起きる出来事を、物語をつづります。
彼の視点で、動物の生きる世界がとても鮮やかに描かれています。
彼らの世界には、彼らの文化や価値観がある。
確かな文章力のお陰か、匂いから喧噪まで聞こえてきそうです。

この世界に人間が訪れ、持ち込んだもの。
動物の世界は変わるのか。それとも何も変わらないのか。
違う点、同じ点をたくさん目にしてきた主人公は、いつか何かを見つけるのか。

余韻の残るラストに、まだ彼らの物語が続いているような錯覚を受けます。
大変面白かったです。

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