そして獣は天を仰ぐ

作者 ポンチャックマスター後藤

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★★★ Excellent!!!

戦時中のベトナムから、獣が住まう異世界――動物達の国アトラムに来てしまった、ニンゲンの話。
あらすじはシンプルなのですが、読み進めると、この物語が圧倒的なパワーを持っていることに気づかされます。

唯一の人間であり、記者の男イイヌマ ミチアキは、この国で起きる出来事を、物語をつづります。
彼の視点で、動物の生きる世界がとても鮮やかに描かれています。
彼らの世界には、彼らの文化や価値観がある。
確かな文章力のお陰か、匂いから喧噪まで聞こえてきそうです。

この世界に人間が訪れ、持ち込んだもの。
動物の世界は変わるのか。それとも何も変わらないのか。
違う点、同じ点をたくさん目にしてきた主人公は、いつか何かを見つけるのか。

余韻の残るラストに、まだ彼らの物語が続いているような錯覚を受けます。
大変面白かったです。

★★★ Excellent!!!

動物達の国のお話。
と言っても、明るく楽しい訳じゃない。
動物が国を治め、商売をし、家庭を作り生活する世界が、現実味を持って描かれる世界
そこに現れた無力で無関係な人間が、とても人間らしく、動きます。

面白い上に読みやすい。
一つの物語として中弛みなく流れていく。
展開が読めず、読み進む毎に感心し裏切られる気持ち良さがありました。
物語の本筋を立てる為の背景・設定も違和感なく差し込まれていて、文章力が高い高い。
皆さんも是非

★★★ Excellent!!!

内臓の内側からがりがりと削られる感覚。
うっすらと吐き気がこみ上げる不穏さ。
ダイイングメッセージの血文字に似た渾身の文字たち。

それはもう楽しんで書くだのお祭りでコンテストに参加する
といった意識とは一線を画している。
ラスト近くで泣いた。獣のように唸りながら。

超絶ド天才のこの作品、読んでください。

「生きるためにやらなくて良いことをやるって凄いですよ」

本当に。

★★★ Excellent!!!

異世界転生モノの醍醐味といえば、主人公が異世界になにを持ち込むかという点ですが、この作品の主人公・飯沼道明(イイヌマミチアキ)が持ち込んだのは、現代日本の思想でした。
他の異世界転生作者も扱おうとし、その誰もがうまく活かせなかった"思想の違い"を、この作品の作者・ポンチャックマスター後藤氏は完璧にコントロールしています。
主人公がもたらした思想が、異世界を、確実に不穏な方へ誘っていく。しかしそれはもはや主人公がどうにかして止められるものではなく、いつかくるバッドストーリーに私たちは怯えるしかありません。
作者・後藤氏は昔から状況描写・心理描写に非常に長けており、感受性の高い私たち日本人はあっというまにこの作品の虜になるでしょう。

★★★ Excellent!!!

この作品には、古き好きファンタジーの要素と新しいSF的な要素が詰め込まれている。

まず、主人公のアトラムの文化風俗を分析的に語る視点。これは古典的なファンタジー、トールキンの「指輪物語」や「ホビットの冒険」でも採用された、ファンタジー世界を魅力的にする最適な手法だ。

アトラムの料理を、原料から作り方まで丁寧に語ることで、話にリアリティを与えている。トールキンというよりは、沢木耕太郎の「深夜特急」に近いかもしれない。深夜特急の主人公も、自らが触れた文化に対して分析的に語る点で一致している。

そして、この物語を異質なものとしている一番の要因は動物たちだろう。

高度な知能と文化を持つ獣たちの視点、我々とは異なる倫理観は、読んでいて幻惑された。獣が獣の肉を食うことで成り立つ社会とカーストは、まさに異世界だ。

良いSF作品は、読者に現実とは全く違う世界を見せてくれる。だから、この作品はファンタジーだけでなくSFとしても成立するだろう。

話の続きを早く読みたい。

★★ Very Good!!

人間が虚無な世界を生きていく為には物語が必要で、この話は主人公のイイヌマ・ミチアキが異世界で、獣の屍の上に意味を詰め込む話。イイヌマ・ミチアキは話の中で獣にも馴染めず、だからといって人間性を示していくこともできなかった。異世界に行ってもベトナムの再現を繰り返すことしかできなかった。閉じられた物語の先に広がるものを見れたら良いなという気持ちがあるが、これ以上は無粋かもしれない。