命とは何か、心とは何か。

アメリカの大学を舞台に、臨床心理士を目指す日本人女子大生の成長が瑞々しいタッチで描かれています。
その筆致そして文体と作風が、まるで読者に洋書の翻訳を読んでいるかのような気分にさせるのです。そしてそれが見事なまでに本作品の雰囲気と絶妙にマッチしているのです。
本作のテーマは、タイトルにもあるように「命」、そして「心」です。
奇しくもこの2つはハートを意味する概念であり、心臓とは似て非なるものであります。
この一見避けたいようにも思える重苦しいテーマに、作者様は心理学を媒介としながら真正面かつ懸命に描こうとされています。
登場人物表や舞台設定、専門用語への解説など本作品への真摯で丁寧な作り込みを見れば、読者にどうにか自分の思いを伝えたいという熱い気持ちが嫌でも伝わってくるはずです。
物語はまだ半ば途中ではありますが、一度読者として目が離せません。
臨床心理士を目指す主人公の香住は、そして心に傷を負ってしまったトーマス少年は、最終的に一体何を見出すのでしょうか。
読めば必ずや何かを感じるはずです。
命とは何か、心とは何か、一緒に考えてみませんか?

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