一番身近でいて、一番わからない自分の心――
- ★★★ Excellent!!!
主人公の香澄は担当教授の依頼で、ある少年のカウンセリングをする事になった。
しかしその少年は心に深い傷を負っていて、香澄や友人達は試行錯誤しながら自分達なりに少年との距離を縮ませていく。
この作品は『命』『心』等といったものをテーマにしていますが、暗く重苦しい雰囲気では決してなく、本筋は日常的な風景の中で進んでいきます。
しかしこの日常的な風景であるからこそ、テーマである『命』という言葉が胸に刺さってハッとさせられる。
この物語はそういうものだと、序盤から察する事ができる程流れるようなストーリー展開です。
一番身近で、それでいてあまり意識する事のない『命』の存在。
自分のものであるはずなのに、時々わからなくまってしまう『心』の行方。
誰もが経験してもおかしくない心の病。
それを鮮やかに且つリアルに、何も余計な事がない文章表現で綴っていると思います。
是非御一読下さい。