興味が無くても楽しめる、哲学の思想


 哲学の基本は、概念を、そして意味を突き詰める事。
 それによって示されるのは、この世の理屈も限界も超越した可能性。

 しかし哲学は、多くの人間から敬遠される。

 何故なら哲学は『今』役に立つ事が非常に少ない。
 神は居るか居ないか? 人間の意識は何処にある? この世界の真理とは?
 そんなことを考えたところで、実際の生活には何の役にも立たない……。

 そうではないのだ、という事を、この作品は如実に示すことに成功している。

 魔法という形で『目に見える』状態にされた哲学の思想は、いずれ科学によって実現され得るあらゆる可能性を浮き彫りにしている。哲学という一見何の役にも立たない思想を、魔法という形で親しみやすく転換する事で、その理解に大きく貢献している。

 それは哲学の入門としてこれ以上ない導入では無いかと、僕は考える。

 勿論、ファンタジー作品としても非常に質が高い。

 その性質上いわゆるチート系に含まれるのだが、構成・設定共に確実に作り込まれており、変に思える部分はほぼ無いと言って差し支えない。哲学に興味が無くとも楽しめる内容だと断言できる。

 哲学、という言葉で敬遠せずに、是非読んでみて欲しい作品だ。

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