心をさらけ出せる、かけがえのない相手とは──

それぞれの事情を抱えながら、それぞれに傷を負った二人が出会った、雨の夜。濡れた「子犬」を思わず拾ってしまった男に訪れる心の転機。
自分で気づかない、あるいは気づいても気づかないふりをしてしまう人間の微妙で繊細な心の動きを掬いとる描写。二週間というほんの短い間に、気づかぬふりをしているうちに、いつしか心を解かれほどかれ、かけがえのない存在になっている。食事やアルバムといった小道具をうまく活かして、その感覚が読んでいる者にも沁みるように伝わってきます。
前向きな風の吹く終わり方に思わず口元がほころびます。あたたかい余韻を残す、短いながらも素敵な物語です。

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