若者が二人、月下の酒宴。それこそが彼らの戦争でもあり、邂逅でもあり。
- ★★★ Excellent!!!
山岳の民ラゴ族の若き族長、サウレリは戦の最中にある。
対峙するのは、ラゴ族の地と境を接した定住民の国、烏翠。
宗主国と呼ぶのは抵抗がある。交易によって共存してきた。
なのに、なぜ烏翠は唐突にラゴ族に苛政を突き付けるのか。
一方、烏翠の朝廷からラゴ族へと遣わされた使者がいる。
彼の名は、弦朗君。烏翠の王族に連なる貴公子である。
ほとんど丸腰のような状態で戦地に行き倒れていた彼を、
陣中にあったサウレリは偶然、保護する運びとなった。
サウレリと弦朗君は和平交渉や取り引き、駆け引きを通じ、
やがて感情や信念をぶつけ合い、理解し合おうと試みる。
互いの立場の相違点や共通点、人の上に立つ身の難しさ。
束の間の語らいがもたらすのは、悲劇か和平か、友情劇か。
決してわかり合えないわけではない。
ただ、男たちには譲れないものがある。
作中を渡る風の色合いと言おうか、
雰囲気がとても好みで、すごくよかった。