あとがき

あとがき

 ここまで読んでくれてありがとうございます。

 最後に、筆者のことを少し語らせていただきます。


 え、興味がない?

 そ、そんなこと言わずに。本当に、ちょっとだけだから。



 文中でも書きましたが、私が受験勉強を始めたのは高校3年生になってからでした。

 思春期特有の全能感ってやつだったんでしょうね。

 高校生の頃の私は「大学なんてくだらねえぜ」と息巻いており、特に何かをしたいというヴィジョンがあるわけでもないのに、進学をするつもりがありませんでした。


 両親は基本的に放任主義で、進路についてもそれまで口を出すことはほとんどありませんでした。

 ですが、あるとき父親が突然「東大を見に行くぞ」と学校を一日休ませて私を東京に連れていきました。

 まあ見るだけなら(学校も休めるし)と、何も考えずにほいほいとついていきます。

 そんな私が、東京大学駒場キャンパスを見たとき、何故か不意に「ここで勉強してみたい」と思ってしまいました。


 別に父親は東大出身というわけではありません。

「日本一と言われる大学を直接見せたら、何かが変わるかもと思った」と、後からそう聞きました。単純な自分はまんまとその通りしまったわけです。

(心を入れ替えて本格的に受験勉強を始めても人生はそんなに甘くはなく、一年間浪人をすることになりますが。)


 東大を受験しようと思う。

 そう父親に告げたとき、父親が言ったことを今でも覚えています。



 別に学歴なんかのためじゃない。

 大学でいろんな人達と触れ合う。

 それだけで人生勉強になるんだ。

 ダマされたと思って行ってみろ。



 その言葉の意味を本当に理解したのは、大学を卒業してからでした。


 世の中にはいろんな人がいます。

 理解できないくらいの変人や天才もいれば、自分と同じくらいの凡人もいて。

 どうしようもないくらいロクでもないヤツもいれば、尊敬できるくらい努力家のヤツもいて。


 そんな様々な人達と触れ合う機会に恵まれました。

 そして、自分と合う部分だけで慣れ合うのではなく、どうしても相容れない価値観を認め合うことも学びました。

 理解できなくても、納得できなくても、まずは認める。

 きっと父親が言いたかったのは、こういうことだったのだと思います。


 あのとき、進学することを勧めてくれたこと。

 大学に行かせてくれたこと。

 数年前に他界した父親には感謝しています。



 もちろん大学に行くことだけが勉強ではありません。

 ただ、いろんなことを学べる機会は間違いなく増えると思います。


 あのときの私のように大学に行く意味なんて無いんじゃないかと考える高校生。

 何の為に通っているのかわからなくなった大学生。

 そういった方が、もしここを見てくれて、少しだけいろんなことを考えるきっかけになれば。

 それ以上の幸いはありません。



 おしまい。

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これから「東大」の話をしよう 穂実田 凪 @nagi-homita

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