3・人魚ですが何か?

俺は恐る恐るその女性に声をかけた。


「き、君はその…」


「なに?」


「人面魚…」


「んな訳ねぇだろ!人魚だよ人魚!」


「痛い痛い痛い痛い!!分かった、分かったから尾ビレで往復ビンタはやめて!!!」


人面…いや、人魚と名乗る女を釣ってから数分も経たない内に顔面はパンパンだろう。


腫れているのかちょっと目が見づらい。


俺はまたその女性に話しかけた。


「その、人面…」


「あぁ!?」


「に、人魚さんは…」


「リティア」


「え?」


「名前!リティア、ティアで良い。んで、何?」


ジロっと睨みつけながらティアが先を促す。


「ティア…さん、は、何故俺の竿に…?」


俺はビクビクと怯えながら尋ねた。


こえぇ!


超こえぇよこの人魚!


顔は綺麗なのに言葉遣い荒いし眉間に皺よってるし!!


「あー…」


言いにくそうに頭を掻くティア。


なんかマズい事でも聞いたか…?


「お礼言いそびれた」


「へ…?」


思ってもみない言葉が返ってきた。


「海ん中散歩してたら迷って溺れかけてたら糸があったからそれに掴まったらアンタに助けられた、ありがとう」


「どう、いたしまして…?」


迷子の上、人魚なのに溺れかけた?


半分人間なのに方向音痴?


いや、人間でも方向音痴はいるが…


半分魚で溺れる?


アレか?ドジっ娘なのか?


ツッコミたい所はいっぱいある。


…が、また顔面ビンタは御免だ。


「何かして欲しい事は?」


ティアが聞いてきた。


「して欲しい事…?」


「うん、助けてもらった礼。願いを一つだけ叶えてやる」


「マジで?」


「マジで」


こう来たらチャンスだ。


願い事なら決まってる。


「それなら…」






「あなたをお嫁さんに下さい!」


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