美しい女装男子と、凛々しい男装女子の冒険譚 もしくは、運命の恋のお話


 本作は『ルクトニア領百花繚乱円舞曲』の続編にあたります。

 前作の主人公たちの息子、娘を主人公とした、いわゆる昨今流行りの「二世もの」。前作を読んでなくても十分楽しめますが、やはりここは前作の主人公たちが親世代になり、いまも幸せでいることを確認できる楽しみも含めて、前作『ルクトニア領百花繚乱円舞曲』から読んだほうが、より楽しめるのではないでしょうか?


 本作の主人公は、前作の名脇役ウィリアムの娘オリビア。彼女は騎士である父に倣うように、領主の息子であるアルフレッド・オブ・ルクトニアの護衛の任についていた、男装して。
 彼女か守るアルフレッドこそは、前作の主人公アレクシアと、女装の美青年ユリウスの間に生まれた男子であり、オリビアの幼馴染でもあるのだ。


 本作は、前作に寄せられた読者からのコメントをアイディアの基幹としているらしいです。

「ユリウスに息子ができたら、彼も女装するのか?」

 しそうな気がしますねー。そして、そこにウィリアムの娘を登場させ、彼女は男装してもらう。なんか冗談みたいな設定ですが、この「女装男子」と「男装女子」の幼馴染二人の恋が、本作の基本的なストーリーであります。そしてそこに、もう一本、金髪少女連続殺人事件を二人が追うという、もう一つミステリアスなストーリーが絡み、見事な二重プロットとなっています。


 幼馴染であった二人が成長し、子供のままではいられなくなり、そろそろ婚姻とか政治とか、そんなことを考えなくてはならなくなった頃、二人の気持ちはすれ違いはじめて……。
 しかし、そこに金髪の少女が誘拐されて無惨に殺害される事件が起き、二人は協力してこの謎を追うのですが……。


 きらびやかな宮廷描写や貴族の生活をリアルに描きつつ、あくまで少女小説としての体を崩さない本作は、恋愛小説好きの少女や、かつて少女だったお姉さま方の期待を裏切らない甘くて華やか、アクションあり謎解きありの快作です。

 また前作を読んだ方なら、かつての登場人物たちの成長した姿や、その後のエピソードも楽しめておいしさ二倍。
 ちょっと危なっかしい息子と娘の活躍も、親目線で楽しめます。期待を裏切らない作品であります。



 なにげにフォローしようとして、すでに200人以上のフォロワーがいるのを見て、正直ビビりました。
 そのフォロワー数の多さが、ぼくの100の言葉よりも本作の魅力を雄弁に語っていることでしょう。

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