二人は、確かにそのとき小さな世界を独占した。たとえ一瞬でも。

読み終えてたとき、私は悲しかった。
日陰で世界を嘲笑っても、いつまでもそこにはいられない。こどもはやがて進学し、就職し、家庭を作り、統計と収支の数字に紛れ、唾をはきつけたはずの世界に組み込まれなければならないからである。
その冷たいさだめを裏切るにはどうすれば良いか。
その答えがこれだ。確かにその瞬間、駅という世界は彼女らが支配した。その場にいた者を驚かせ、恐がらせ、苛立たせ、各々の人生に小さく爪痕を残す。しかし電車は再び動きだし、世界は彼女たちなどいなかったように、つつがなく、回る。
それは悲劇なのだろうか、喜劇なのだろうか。

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