最後の言葉に全てを託す悲恋の物語

感情や心理描写を前面に押し出し、作者の作品に対する思いが力強く文章に込められている、良くも悪くも直情的な作品です。

悠希と春香という二人の語り手により紡がれる二人の物語です。他の登場人物を引き立てさせないほどに、二人の感情の交錯が読んでいて溢れ出てくるような、少し悲しくも、どこか温かい恋愛のお話でした。

愚見を申し上げてしまうと、「小説」というカテゴリーでの評価は難しいです。というのも、この作品は、起承転結の構成ではなく、作中歌の歌詞が全て書かれていたり、日記の文面が長く続くなど、小説の型に囚われない作風を持っているからです。

しかし、そんな作風を受け入れて、作者の思いが届いた時、この作品は真の輝きを見せると思います。10人に読ませて10人に一定の評価を得る作品というより、10人のうちの1人を感激させるような作品だと思います。

私は、この作品のような、人間の感情や作者自身の思いに忠実に書かれた物語が好きです。

だから私は、この作品に「あえてよかった」と賛辞の言葉を送ろうと思います。

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