本作はタイムリープをテーマに描かれている二人の男女の恋物語。よくある純愛ものなのかと一見思うタイトルですがそうではなく、彼と彼女が繰り広げる恋の背景にある障害に読み手それぞれ考えるものがあるかと思います。ですが、二人の想いは過去現在未来、全てを結んで奇跡を生み出します。読み進めていくうちに二人の葛藤にもどんどん惹き込まれ、二人を応援せずにはいられなくなることでしょう。
感動を狙って描写されているのではなく、堪えなければいけないのに堪え切れない想いを思わず漏らしてしまいながら書いたような熱い文体に心が揺さぶられます。また作者様の手に二人の気持ちが宿っているかのような生身感のある感情表現は必見です。
1ページ目を開いたからには途中で読みやめないでほしい。ラストに向かって現れる暗号に込められたふたりが最後に伝えたかった本当の気持ちをぜひ知ってほしいです。
感情や心理描写を前面に押し出し、作者の作品に対する思いが力強く文章に込められている、良くも悪くも直情的な作品です。
悠希と春香という二人の語り手により紡がれる二人の物語です。他の登場人物を引き立てさせないほどに、二人の感情の交錯が読んでいて溢れ出てくるような、少し悲しくも、どこか温かい恋愛のお話でした。
愚見を申し上げてしまうと、「小説」というカテゴリーでの評価は難しいです。というのも、この作品は、起承転結の構成ではなく、作中歌の歌詞が全て書かれていたり、日記の文面が長く続くなど、小説の型に囚われない作風を持っているからです。
しかし、そんな作風を受け入れて、作者の思いが届いた時、この作品は真の輝きを見せると思います。10人に読ませて10人に一定の評価を得る作品というより、10人のうちの1人を感激させるような作品だと思います。
私は、この作品のような、人間の感情や作者自身の思いに忠実に書かれた物語が好きです。
だから私は、この作品に「あえてよかった」と賛辞の言葉を送ろうと思います。
言いたかったのに、言えないことって誰でもありますよね。
これは、そんな、言えなかったことを伝えたいという想いが起こした物語だと思います。
二人の視点から語られることで、互いの心情がより強く伝わってきます。
要所で語られる歌の歌詞も切なくて、物語に深みを与えています。
また、視点だけでなく日記や回想による過去と現在、未来との絡みも書かれ、それぞれが繋がっていく様には、感動しました……!
二人が信じた希望と、起こるのかもわからない奇跡の物語。
細部にまで作者の想いがつまった、素敵な小説です。
近況ノートも合わせて読むと、その想いにより気づけます。
まずは、日記のように1ページ、めくってみてはいかがでしょう。
《1/28完結に伴いレビュー更新》