中華風異世界の後宮ものです。つまり、コンテストでレーベルによって明記されて要求されているある意味テンプレともいっていいタイプではあるのですが。
ただ、切り口はかなり面白いかも。
中華といえば文字、文、浩瀚な正史の国。かなり細かい部分まで正史の文章に何でも書き残してしまう、というのが大きな特徴なのですが、それを設定の中に取り入れた中華風というのも実は珍しいのでは。
設定といえば、舞台となっている中華風の泰連国以外の周辺国がきっちり設定されていて、それが物語の中に絡んで出てくるのが面白い。
恐らく日本がモデルなんだろうなあと思われる春原国などは、外国から見た日本という感じで魅力がありますし。主人公の出身の伎国では内乱が起きていて、日本ではない国がモデルにせよたぶん壬申の乱あたりをモデルにしていると思うのですが(違ったらすいません)。そういう感じで、外国の存在によって平面的な広がり、史書の存在によって舞台となる国の深みが増しているように感じました。
そんな中でどうして女である主人公が史書に、というと、主人公の兄がシスコンで……といった感じでキャラも一筋縄ではいかない感じです。
中華の史書は何でも書く。あれやこれやも後世に向けてさらされる。主人公がどんなことをさらされるのか、をノゾキする感覚。というのがある意味本作品の楽しみ方の一つなのでは、とか思った次第です。