最終話 縦読みなんてつまらない
『縦読みって本当にセンスがないよね』
『何の話?』
『よくあるじゃん。横書きの文章で、それぞれの行の頭文字を取って読んだら別の文章になってるってやつ』
『ああ…、よく都市伝説とかである』
『そうそう。いろは歌とか有名だよね』
『なにそれ(笑)』
『知らないの?』
『知らん』
『いろはにほへと
ちりぬるをわが
よたれそつねな
らむうゐのおく
やまけふこえて
あさきゆめみし
よひもせず』
『いろは歌じゃん。いちよらやあよ?どういうこと(笑)』
『あ、これは最後の一文字をとるの』
『とがなくてしず?』
『咎なくて死す、罪もないのに殺されたって意味だよ』
『なにそれ。ちょっと無理あるくね?』
『そう。それが言いたいんだよ。縦読みってほとんどこじ付けみたいなの多いし。都市伝説でもさ、偉人の手紙を読んで、鬼の首取ったみたいに縦読』
『みの文章を披露してくるんだけど、本当にセンスないと思う』
『あ~、なんか…なんでこの話したか分かったわ』
『分かった?』
『最近、動物の変死体がたくさん見つかってる、あの事件だろ』
『そうそう。まさにこのいろは歌みたいだと思って』
『咎なくて死す、か』
『うん、罪もない動物を誰が殺したんだろ』
:
『そういや、今どこ?』
『電車。出勤中』
『最近、近所で空き巣が多いらしいけど聞いた?』
『いや聞いてないわ。マジ?』
『聞いてない?昨日、親が言ってた。戸締りちゃんとしなさいって』
男はスマホを弾く指をはたと止めて、ぼそりと呟いた。
「あ、家の鍵閉めたっけ……」
ここまでの行動を逆再生し、家の前で一時停止する。
確実に鍵をかける自分が容易に思い起こされ、男は安堵の溜息をつく。
イヤホンから流れる激しい曲調の音楽に、少女の舌打ちが微かに聞こえた。
(蛇尾さんの気になる 第一話に戻る)
蛇尾さんの気になる 白地トオル @corn-flakes
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