第7話台湾の魅力

台湾の一番の魅力はなんだろう、と考える。


どうして感受性豊かな若い女性たちだけでなく、とうに色々と枯渇したはずの三十路男までも虜にするのか。彼の地の何がそこまでさせるのか。


美味しいご飯?手頃な物価?優しい人々?


否、もちろんその全てが大事な魅力であるのだが一番ではない。


台湾の魅力とは、我々が抱く幻想を具現化してくれることではないだろうか。


雰囲気はスチームパンクの世界さながらでありながら、治安はいたって安全。よほどバカなことをしなければ、夜の街を一人で歩いても危険なことはあまりない。


裏路地は幻想的でなにかが潜んでいそうな雰囲気なのに、入ってみれば親切なおじさんおばさんが美味くて安価な料理を作っている。


ドキドキの後には必ず安心がある。まるでホラータッチで描かれた子供向け番組の様だ。バッドエンドは存在しない。必ず安心で幸せな結末が待っている。適度なスリルを味わえる。


海外でこういった経験はなかなかできない。日本人にとって日本より安全な国はあまり存在しないからだ。


だが台湾は数少ない、日本と同じくらい安全な外国と言える。心配なのは言葉の壁くらいだが、ある程度勉強していけば差し支えない。


ホテルの窓から雨に濡れる町を眺めていると本当にこの国が愛おしくなった。小説や映画の世界に迷い込んだ様な気持ちになれる。たまにテレビに出てくる、日本に魅せられた外国人はきっとこんな気持ちなのだろう。母国以外でこんな感情を抱く国が存在することに驚いている。


帰国して一カ月以上たった今でも、私はまだ熱病に侵され続けている。


雨が降って排気ガスと土の混じった臭いを嗅ぐと、不思議とあの八角の香りがそこに存在するような気分になる。きっと、私身体はまだ台湾の地を求めているのだ。


美しく絢爛で、それでいて素朴な内面。どこか妖しげで、危険な臭いも漂わせつつも人々の温もりを確かに感じれる。


台湾とはそんな混沌カオスが平気で共存する不思議な魅力の国なのだ。もしもアナタが手頃な冒険に憧れるなら、これほどうってつけの国はないだろう。


自由が手元にあるのなら、今すぐチケットを予約するべきだ。


私はまだ、台湾という素敵な熱病に侵されている。


再見




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台湾熱病 三文士 @mibumi

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