彼岸新幹線さとり号

　八月半ば、お盆の季節となると、仏壇や玄関先に精霊馬と呼ばれるナスやキュウリで作った牛馬を飾る伝統がある。
　それは亡くなったご先祖様達があの世とこの世を行き来するための乗り物で、来るときはキュウリの馬で足早に、返るときはナスの牛でゆっくりと。少しでも長くこの世にいて欲しいという願いが込められているそうだ。
　しかし今のご時世、そんな馬鹿げた迷信なんて誰も信じやしないだろう。
　江戸時代ならともかく今や二一世紀。科学技術は発達し、どこにも馬や牛で旅行する人間なんて存在しない。

　――そう。奴らは新幹線でやってくる。
　かつて二週間かかったあの世とこの世の往来も、新幹線ではわずか一時間四五分だ。