第3話 ネココ会心の作ちっぱい作家

『ふた房のたわわな果実』


 著 ネココ


――――――


「そこにある二つのたわわな果実につけるんでないの」


 この台詞に、妻は、赤面した。


  ***


 ちっぱいエルフちゃんと呼ばれる妻は、この世界では、ライトノベル作家で名の高いネココのペンネームを持つ。


 ちょっとだけ背の高い夫のエルフは、イヌコとして、ライバル純文学作家である。


 ネココさん、最近スランプ続きで、締め切りに間に合いそうにもない。


 やってしまいました。

 副業です。


「イヌコたん、これ可愛いかなあ?」


 見せたのは、エコたわしの数々であった。


 最初は、シンプルな四角っぽい模様編み……。

 段々、編み柄も複雑になり、花びらの膨らんだものから、立体的なバラのモチーフ等であった。


 イヌコに思わず心の声を出させた。


「そこにある二つのたわわな果実につけるんでないの」


「そこ……? たわわ……? 果実……」


 恥ずかしくて、恥ずかしくて、まいってしまったあげく。


「きゃるーん!」


 ちっぱいをぷるんと抱えて隠してしまった。


「さ、副業代、払って貰おうかいのうネココ」


 両手を大きく広げるイヌコ。

 カモン。

 できれば、抱っこ。


「きゃるーん! 勘弁してください……!」


 ぴょんこぴょんこ跳ねた。


「酒の肴じゃ、踊れ踊れ」


「呑めないのに何を仰るのよ」


 イヌコは、バラと十字架のエコたわしを選んだ。


「そこにある二つのたわわな果実につけるんでないの」


「しつこいぞ」


 くすくす。





Fin


――――――

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