第7話 アンドロイド

 数日してダッドから荷物が届けられた。


 予想以上に多くの荷物が有る。マリアは困惑してリストを見るとアンドロイド本体と外皮の再生タンクが有った。

 アンドロイドは生体外皮を持っており、これこそがアンドロイドを人間らしく見せる為の秘密である。


 カーボン骨格に人工筋肉を組み合わせ液体燃料で動く。しかしアンドロイドの外皮は人間のクローン組織で作られている。

 外見的には人間の皮膚そのものであるから張りもあり、しっとりした感じも人の皮膚そのものである。

 外皮に栄養を補給するためにアンドロイドは一日3~4時間程再生タンクに入らなくてはならない。これを怠ると外皮は死んで体から剥がれ落ちてくるのだ。


「しかしそれ以外の荷物の多さはなんなんだ?」アランがあきれてかえっていた。

「知らないわよ。私はただ昨日アンドロイドを送ったと聞いただけだもの。」

 アランは荷物の中で棺桶のような箱を示して言った。

「これが君の言っていたアンドロイドだね。他の荷物はいったいなんだろう。」


 試しに箱を開けてみるとその箱は下着の山だった。フリル有り、ヒモ有り、色も各種さまざま。


 アランがうれしそうに見ているのに気が付いたマリアはすぐに箱を閉じるた。

「そうするとこれはもしかして。」

 アランは別の箱を開けてみた。さまざまな衣装が中に入っていた。メイド服、チャイナドレス、レオタードまで有った。

「これは……また変わった趣味を持っている人だっだんだね。当分衣装には困らないや。」


「あんたこの娘にこんな格好させるつもりなの?」

「いけないのかな?」

 アランにこんな趣味が有るとは知らなかった。そのうち私にもこんな服を着ろと言い出すかも知れない。

 アランがダッドと同じ趣味?マリアの背中から全身に震えが走った。


「あの腐れ外道が。」マリアはあまり上品とはいえない言葉を一人つぶやく。


「あの、運んでいいっスか?」

 運送屋に促されて荷物を倉庫に運ばせる。

 マリアは一刻も早くこのアンドロイドをシンシアに見せてログインさせて見たかったので配達してきた男たちにアンドロイドを乗せたカートをシンシアのいる部屋に運ばせた。


「シンシア!見て、素敵な物が手に入ったわ。」


 マリアは少し興奮していた。これでシンシアが人間のように振舞う事を想像するとわくわくする自分を抑え切れなかったのだ。

「おはようございますマリア。」

 相変わらずシンシアは抑揚の無い声で答える。

 マリアの後から台車に乗せた荷物を男が押して入ってきた。

「じゃあ、サインをお願いします。」

 男はそう言ってサインを受け取ると帰って行った。


 マリアが箱の蓋を開けると中から女性が現れた。

 色の白い銀色の長髪をした少女が胸で手を組んで寝ていた。クラッシックな服を着た少女は童話のアリスを彷彿とさせる。

 しかしよくよく着ている服を見るとなんとそれはメイド服であった。

 再びマリアはダッドに対して表現不可の悪態をついた。


「HRー372型看護用アンドロイドですね。」

 シンシアはアンドロイドを見ただけで型式を判定してみせた。

 この時マリアは判らなかったがシンシアの本来の能力を垣間見せた瞬間であった。


「訳ありの友人から譲ってもらったのよ。」

「コントロール用のセディア級のコンピューターが必要になりますが。此処で使われるのですか?」

「あなたがコントロールするのよ。」

「わたしがですか?」

 これはシンシアにとってすら意外な計画だったようである。


「そうよ、コロニー内データー通信に対応しているのよ。だからあなたでもコントロール出来る筈よ。いいこと?IDは……。」

「判りました。やってみましょう。」

 そうシンシアが言うといきなりロボットがピクンと動いた。続いて体を反らせると全身を痙攣させる。

 マリアがびっくりして見ているとロボットが上体を起こすと手足をバタバタさせる。


 しばらくして動きが止まると台から降りてゆっくりと立ち上がった。まるで棺桶からゾンビが立ち上がるような錯覚を覚えてマリアは後ずさった。


「こーんとろおおーるできました。」

 ロボットの口から声が発せられた。

「ほほう、やっぱり。」アランが感心したように言った。

 マリアはアランが何を言っているのか判らなかった。


「シンシア、IDは?」

「必要ありません。」

「どうやら僕の考えが正しかったようだね。」

「4号機は元々固定した電子回路を持っているわけじゃないから必要に応じて相手との回路を構築してしまうんだ。だから我々が考えるインターフェイスと言うものは無意味なんだよ。」

「どういう意味?」


「いや~っ、簡単なことだよ。無機頭脳にとってはどんな機械とでも何の障害もなく通信が出来るって事さ。素晴らしいよその気になれば無機頭脳は木星中のあらゆるコンピューターにつながることが出来るんだ。」

 マリアは驚いた。マリアは電子回路の事や無機頭脳の事は何も判らなかった。しかしアランの言っている意味は理解できた。


「つまりシンシアは木星に有る全てのコンピューターとリンクが可能になるってこと?」


「ああ、そうなるね。」

「コンピューターが障壁を設けたら?」

「関係ないよ。インターフェイスの概念が無いんだから。」

 マリアはシンジの言った言葉を思い出した。『無機頭脳の本当の性能』これがその事だったんだ。


 これは実は恐ろしいことで如何なる障壁を設けても問題なく他のコンピューターにアクセス出来ることを意味するからだ。

 しかし政府はそのことに気がついているのだろうか?シンジの話しぶりでは気がついていないようだ。


 だがその可能性に気がついた者もいるのかも知れない。アルとシンジが地球に行く以上地球が無機頭脳の研究を始めることは目に見えている。

 だから政府はそれまでは研究の継続をさせておくつもりなのだ


「アランあなた知っていたの?」

「ああ、無傷頭脳の特性を考えれば当然の事だよ。実際に見るのは今回が初めてだけどね。」

 アランは全く斟酌すること無く答えた。


 慌ててマリアは周りを見た。

「あなたこの事の意味が判っているの?」

 そう言えばアランは専門以外のことは全く興味のない男だっけ。幸い今の事を誰にも見られてはいない。

「アラン。無機頭脳のこの特性を知っている人は他にいる?」

 アルとシンジは知っているよ。ただアルに話した時にそういった仮定の特性を発表するんのはまずいから当分は特性として話さないことにしようって決めたんだ。」


 アルが決めた?アルはとっくの昔にこの無機頭脳の性質を知っていたんだ。


「プログラマや他の技術者は?知っているのかしら?」

「さあね、その手のテストはしなかったけど。メインコンピューターにつないだ時に判った人間はいたと思うよ、ただあの事故でかなりの技術者も死んじゃったからね。みんなもう無機頭脳に関わりたいとは思っていないみたいだしね。」

 マリアは改めてあの事故の結果というものを思わずにはいられなかった。

 だからあんなにやすやすと作業ロボットを乗っ取りセディアを無効化してしまったのだ。


 無機頭脳の研究にとってこれ程大きなダメージを与える事件になってしまった本当の理由がこれで判った。


 マリアは脳波通信機をセットしてシンシアに話しかけた。これ以上肉声での会話はまずい。

「シンシア聞こえる?」

「はい、通信は良好です。」

「この通信に最大限のセキュリティをかけて、覗いている者がいないことを確認して頂戴。」

「はい指示通りにしました、現在この回線にアクセスしている者はいません。」


「シンシアあなたは今まで誰かにIDを必要ないなんて言った事あるの?」

「はい12人に言ったことがあります。」

「その人達は今どこにいるのかしら?」

「検索してみます。」

 しばらく沈黙があった。


「ふたりは地球に行きました。7人は事故で同じ日に死んでいます。後のふたりはこの部屋にいます。」

「後の一人は?」

「このコロニーで仕事をしています。」

「だれ?」

「ヨシムラさんです。」


 マリアはほっとした。ヨシムラなら後で話をすることが出来る。


「いいこと、シンシア今後二度と他の人にIDが必要無いなどと言ってはだめよ。それと誰かがIDやパスワードを必要とする接続を行う場合は必要なくともそれらを要求しなさい。わかった?」

 マリアは断固とした命令をシンシア与えた。

「わかりました。しかし、何故でしょうか理由を教えていただけるとより的確な対処が可能となりますが。」


 マリアは一瞬逡巡した。シンシアに本当の事を話すか否か?しかしマリアはシンシアが全くの子供であることを思い出した。間違いのないように合理的な説明をしておくほうが良い。

「あなたのその能力はとても危険な物なの。あなたはどんなコンピュータでも簡単にアクセス出来てしまうでしょう。」

「はい、いつもアクセスしています。」

 マリアこの言葉を聞いて焦ってしまった。やっぱり脳波通信機で話していて良かった。この娘はまったくそういった認識が無い。


 もっともその認識が無いのはアランも全く一緒では有ったが。


「そういう能力はある一部の人にはとても魅力的な力なの。その能力を使って悪いことをする人が出てくるかも知れないのよ。」

「それはどのような人でしょう?」


 悪人と言いかけてマリアは言葉を継げなかった。


 実際にその力を一番使いたがるのは国民を管理したがっている木星政府と木星軍そのものだろう。

 彼らは常識的には悪人ではないからだ。


「誰でもあり得るのよ。」

 マリアは用心して言葉を繋ぐ。

「それでは区別がつきません。」


 シンシアの言う通りだ。最も悪い人間は善良な笑顔か、国民の代理としての権利を振りかざして近寄ってくる人間だ。


「そうよ、だからみんなに秘密にしなくてはだめなのよ。」

「現段階ではあなたとアランとヨシムラが知っています。」

「アランとヨシムラには私が言っておくわ。」

「わかりました。これは私だけの秘密にするということですね。」

「そうよ、私達だけの秘密よ。」


 マリアはこれでシンシアの説得に成功したことになるのかどうか自信が無かった。

 シンシアは生まれたばかりの子供だから果たしてどのように理解したのは心もとない。

 こんな事を軍に知られたらどんな事に使われるか、想像出来るだけに怖かった。


 しかしアランが想像以上の技術馬鹿なのには驚かされた。自分の研究がどのようなことに利用されるのかということを全く考えたこともないのだろう。

 マリアは脳波通信機を外すとアランにもシンシアと同じ事を言って説明した。思ったっ通りにアランは全くそのような考えにすら思い至っていなかった。


 とりあえず一つの問題は片付いたのでマリアの興味はロボットの方に移った。


「それで、ロボットの方はどうかしら。問題はある?」

「はい特に故障している部分は見つかりません。」

 内部センサーによるチェックは終了しているようだ。

「よかった、個人で所有していた物だから心配だったのよ。」

 マリアはロボットが実用上問題が無いことを知って喜んだ。


 このロボットをしげしげと見ると、やはりダッドの趣味が満載されているようだ。


 銀色の長髪に額まで下がった前髪、前髪の下のやや釣り上がった大きな目、ややふっくっらした感じの顔立ちに形の良い唇。人形のような目鼻立ち。

 襟足からあごの線の造形は非常にバランスが良い。全体的にはやや幼い感じの残る少女といった雰囲気が良く出ている。


 しかも着ている服がメイド服と来ればこれはもうマニアの世界としか言いようが無い。


「それにしても結構大柄ね。」

 マリアよりだいぶ背が高い。アランに負けないくらいの身長が有る。その手の趣味にしてはこのロボットはかなり大柄に作られているとマリアは思った。。

「看護ロボットだからね。力が必要な場面が結構有るみたいで丈夫に作られているらしいよ。」

 アランがそう説明した。確かに病院で見かける看護ロボットは皆大柄な女性だった。

「こりゃ恋人にするというよりぶら下がりたくなるような娘だね。」


 ふとマリアはこのアンドロイドにお姫様抱っこをされているダッドの姿を想像して気分が悪くなってしまった。


「HRー372型としてはやや乳房が大きいようです。」

「ほう、そうなんだ道理で胸がでかいと思ったよ。?」


 そういえば病院のアンドロイドはこんなに胸は大きくなかったはずだ。この娘はどう見ても私より大きい、Fカップは有る。


「メーカーカタログによる寸法に比べ5センチ以上の差が有ります。」

「良く判るわね?」

「メーカーにアクセス致しました。基本情報の他に詳細なデーターも見つかりました。」

「はははは、すごいや。シンシアは何でもお見通しなんだな。こんなに効率よく情報検索が出来るんだね。」


 アランは全く脳天気である。あれ程の事故が有ったのに全くその危険性を理解していない。あとで懇々と説教しておかなくては。


「すこし改造してあるとは言っていたわね。」

 どうも釈然としない気持ちは残るがこの際それは無視しよう。

「顔も特注のようです。股間に用途不明の装置が埋め込まれていますが。」


 あのバカそんなものまで取り付けていたのか。ド変態め。


「その装置の事は忘れていいわ。」

 マリアは苦虫を噛み潰したような顔で手を振った。


「この服装も変わっていますね。」

 シンシアは自分の固定カメラの前でロボットをぐるりと一回転させた。優雅に回る少女はスカートをはためかせた。

「へえ~っ。思ったより可愛いじゃないか。」


 アランが思わず言葉に出す。マリアはアランのすねを思いっきり蹴飛ばしてやった。


「黒のビロードのような布のワンピースですが異常に肩が膨らんでいます、袖口に白のフリル、それにフリルのたくさん付いた白いエプロン。白いソックスは留め金で止めていますね。」

 シンシアはスカートをまくり上げて中を見る。

 アランが驚いた顔をしていたが、目じりがだらしなく下がっている。これもしっかり言っておかなくてはならないようだ。

 マリアは慌ててスカートを降ろさせる。アランは残念そうな顔をした。マリアはアランの横っ面をひっぱたこうかと思った。


「マリア、なぜこのロボットは靴下留の上からパンツをはいているのでしょうか?これでは履き心地が悪いと思いますが。」

 マリアは頭を抱えたこの娘にこんな事を話しても理解はできないだろう。


「服は後で新しいのを買ってあげるわ。」

「いえ、私はこれで結構です。」

 マリアは頭が痛くなってきた。アランはうれしそうな顔も出来ずに顔の表情がばらばらになっていた。


「マリアはどの様な経緯でこのロボットを入手されたのですか?」

「ある男がね、自分の趣味を満たすために作ったのよ。ところがアンドロイドはかなり高価なものなのでしょう。良からぬことをしていてね、それがばれたみたいよ。それで会社にいられなくなったのでロボット売らなくちゃならなくなったのよ。」

「しかしこのロボットを作ってもコンピューターのリース料が高額な物になると思いますが?」

「セディア系の会社に努めていたんだけど会社のコンピューターの不正使用がバレちゃってね、逃げ出したのよ。」

「この人のことですか?」


 シンシアのモニターにぱっと色白でデブでめがねをかけたぼさぼさ頭の男が写った。


「ダット!」

 マリアは言葉を飲み込んだ。

「このロボットの以前の持ち主と思われます、内部ンピューターは初期化されていましたがデーターは残っていました。他にもいくつかの映像が残っています、ごらんになりますか?」


 モニターはマリアが赤面するような画像を次々に映し出して行った。


 アランは横で見ていて笑っていた。どうも男というやつは節操がない。こんな物を見て喜んでいる。

「シシリア、いいわそんな画像はいらないから消しなさい。」

「判りました。他にも音声データー等が残っていますが。」

「音声データー?」

「再生します。」


 シンシアがそう言うとロボットがしゃべりはじめる。


「まあ、旦那様なんてご立派な物をおもちで。」

「旦那様お情けをくださいますよう。」

「ああ、いくいく旦那様旦……」


「消せ!」


 マリアの怒りが頂点を越し爆発した。音声再生を途中で打ち切ってマリアが怒鳴った。

「はい?」

 シンシアがマリアの発言の意味を測りかねて聞いてきた。


「データーを全部消せ!カケラすら残すな全部消去しろ!完璧に消せ!」マリアが普段見せないようなすごみのある声を出す。


「判りました。データーを完全に消去いたします。」

 シンシアはそう言って初期化作業を始めた。

「まったくこの手の人種は」ぶつぶつ言いながら処理が終わるのをまった。


「データーの消去作業終了しました。」

「いいわ、さて新しい体はどうかしら」

「作業用ロボットに比べて可動部分が多く、センサー類も充実しています。かなり複雑な動作が可能と言えましょう。」

「うまくコントロールできるかしら。」

 ロボットは両手を高く上げるといきなり側転からバク転をそして見事な宙返りを行った。

 スカートがひるがえり白いパンツが丸見えになる。


「すごい、そんなことが出来るんだ?まるで人間みたいだね。」再びアランの目じりが下がった。

「アンドロイド技術は義体技術と同じものですから人間と同じ動きは可能です。」

 アランの目は垂れ下がりっぱなしである。


「この娘に手を出しちゃだめよ。」

 マリアはアランをキッと睨んでドスの効いた声で言う。

「大丈夫だよ僕はロリコンじゃ無いから。」


 そういえばこの娘のデザインはすごく若い、15~6に見える。アランは笑いながら言ったがどうも信用がならない。


「シンシア、アランが言い寄ってきても相手にしちゃだめよ。」

「言い寄ると言うのは異性に気に入られようと相手の興味を引く行為と判断して良いでしょうか?」

「そうよ男はみんな狼なのよ。」

 マリアはアランの方を見ながら言った。


「アランさんは私に言い寄らないと思います。」

「どうして?」

「私は女でも男でも有りませんから。」


 アランが吹き出した。マリアもつられて笑ってしまった。

 そうなのだロボットの外見は女だが中身は無機頭脳なのだ。こんな単純な事すら忘れてしまっていた。

 たしかにアランにせよ誰が言い寄ってもシンシアはまったく意にも介さないだろう。


「それで私はこのロボットで何をすればよろしいのですか?」

「とりあえず事務所の雑用でもお願いするわ。それと書類の整理。」

「判りました。」

「机は私のを使って頂戴。端末は使えるかしら。」

「端末を使えるとは私が操作できるか?と問われたのでしょうか?それともこのロボットに操作させられるかと問われたのでしょうか?」

 マリアはさっきのことを考えるとシンシアに取っては端末を直接操作する事くらい簡単であろう事に気が付いた。

「シンシア端末の直接コントロールは駄目よ。」


「速度が1000倍程違うと思いますが?」

 シンシアの判断からすれば当然の事であろう。

「それでも駄目。その体を使って端末を操作して頂戴。」


 シンシアに人間と同じような行動をさせることによりこのボデイのコントロール能力をあげられるだろう。マリアはそう思ったからだ。


「はい、このロボットをそのように使用する事は可能ですが。」

「そう。じゃあそれでたのむわ。」

「わかりました。」

 シンシアが納得するかどうかはともかくマリアの言うことには非常に素直に従う。


 シンシアが席に座ると叔父が部屋に入ってきた。

「おお、これはかわいいお嬢さんだ。」

 シンシアをみて顔がほころぶ。男はみんな狼か?さっき自分で言った言葉を思い出す。


「あら、叔父さん。今インストールが終わったところよ。」

「動作に問題はないかね。」

「無いみたいよ。シンシア叔父さんに挨拶をして。」

「おはようございますマクマホンさん。」

 シンシアはペコリと叔父に向かって頭を下げた。心なしか動作が初々しい。

「ああ、おはよう。問題は無いようだね良かった良かった。」

 マクマホンは娘を見るような優しさで話す。


 看護ロボットは無表情の時もかすかにほほえんだような顔にデザインされている。患者に安心感を与えるためである。

 このロボットの顔も同じように作られていて優しい感じを与えている。

「しかしこんな美人が所内をうろついていたら男子職員が黙って無いだろうな。」

 マクマホンはまさにシンシアの問題点の確信を鋭く突いた。

「何を話すのでしょうか?」シンシアが問い返す。

 三人はは顔を見合わせて笑ってしまった。


 確かにこのロボットは美人に作られている。

 看護ロボットはその仕事上見かけより丈夫に作られており力も出せる構造である。しかしボディデザインをうまく処理してあり無骨さを感じさせない。

「今日からしばらく報告書を作らなくてはならないわ丁度良いから手伝ってもらおう。」

「判りました。」

「しばらく此処で様子を見たらその後の事はまた考えて見よう。」



 マクマホンには何か考えが有るようだった。




アクセスいただいてありがとうございます。

登場人物

シンシア・デ・アルトーラ     世界最初の無機頭脳

マリア・コーフィールド      無機頭脳の教育者 無機頭脳を脳科学からサポート

マクマホン・アルトーラ      マリアの叔父   無機頭脳研究所の次席

アラン・ダニエル         無機頭脳の発明者 工学的方面からサポート

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