バベルの塔は未完成

海外の本を翻訳したものを読んで意味が違和感を感じた事はないだろうか。
それは当然で言語の背景にある基本概念が違うからだ。それでもこのインターネット時代は割とマシになってきた方だと思う。
だがそれが全く断絶した世界ならばどうだろう? というものを真正面から取り組んでいるのがこれだ。そこかしこにファンタジー的な(いわゆる『魔法的な』)要素を含んでいるものの、本質は「もし、こうなら、どうだろう」と言うSFに近い。(余談だがSFとファンタジーの間は本当は無い気がしてならないが)
主人公が主人公としてのメタ意識を持ちつつも、私達の『目』として是非とも頑張って欲しいところである。もっとも物語の構造状に於いて彼が言葉(そしてこの世界の情勢を)理解したら、何かが起こるのだろうけれども。物語としてはそちらが楽しみなところである。

全ての人間の言語を統一されてはいないし、バベルの塔はできなかったのだ。
残った煉瓦で出来た言葉の壁を越えようとする人間を、小説として表現しようとした作者に敬意を表したい。

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