前半と後半で、色合いの変化を意識した演出が物語を映像的に魅せてくれている。 簡潔で読みやすい文章でありながら、粋な演出まで入れる姿勢に、作者の遊び心が垣間見えた気がした。 黒の景色に浮かんだ異質な赤。それは物語の景色を侵食し、圧倒的な存在感を放つ。 しかし、「私」の目の前に広がる底知れぬ闇は、その赤をも塗りつぶす絶対的な黒。 もし、その闇に引きずり込まれたら......
淡々と綴られているのに、線香の香り、田舎の葬式や法事特有の情景が、まざまざと浮かびあがります。怪異の原因も、正体も明かされる事はなく、更に謎も残ったままなのに、これは夢や妄想ではない、と思わせるところが秀逸。