カクヨム限定短編 間章「迷宮の夜のダンスパーティー」


 帝都ローゼリア近郊に位置する深淵迷宮アヴィリディア――から、徒歩で一日の距離にある名もなき小迷宮にティルムたち魔物捕獲PTはいた。


「えっと、この小迷宮に『妖精』の群れが出現したということで、わたしたちに仕事が回って来ました。今日は『妖精』を捕まえます」


「『妖精』ねぇ。随分と可愛らしい魔物が相手じゃないのぉ」


「にゃあ……『妖精』の群れは色々と面倒くさいにゃあよ」


「……」


 枯葉色の髪の新米騎士ティルム・ディード。銀髪の少女神官アルリアナ・デイジーコート。カートを引いたネコミミ冒険商人ククリカ・テンセル。影を人の形にしたような黒い男――『首狩り屋』のセージ・トーラスト。

 いつもの装備のいつもの四人は早速、小迷宮の探索を開始した。

 小迷宮の最奥、地下六階まで一目散に進む。特に魔法的な仕掛けもない普通の洞窟タイプの迷宮だ。出現する魔物もゴブリンがメインで特筆するべきところはない。強いて言うならば、そのゴブリンすら見ることがなくなった『枯れた迷宮』であるということが何よりの特徴だろう。

 近隣の村に住む元冒険者が定期的に見回りをしており、その際、『妖精』の群れが訪れていることを発見した。その話がギルド経由で巡り巡って『人口迷宮計画』の耳に入り、セージたちに仕事が回って来たというわけである。


「『妖精』は、極めて特殊な魔物だ」


 二刻石のランタンが暗い洞窟の中を照らしている。

 先頭を歩くセージが淡々と、だが流暢に語る。


「戦闘能力はないに等しい。人間に対しても友好的で悪意を持たない。だが、特殊能力を持った個体が多く、悪戯好きな性質と相まって思わぬ危険性を発揮することもある」


「おとぎ話に出て来る悪戯妖精みたいなものですかね?」


「近い、かもしれん。とにかく気まぐれで、気まぐれで、気まぐれな魔物だ」


「特殊能力って、どんなのぉ?」


「個体による。多くは、妖精にしか作れない原理不明のマジックアイテム『妖精の道具』を作るものたちだろうな。他に、姿を消すもの、変身するもの、手を触れずものを動かすもの、水を酒に変えるもの、なども見たことがある」


「不思議な力を持つ『妖精の道具』……おとぎ話ですね。ほら、心の綺麗な女の子に妖精のドレスを与えたり、素直になれない子に本当のことしか話せなくなる妖精のお化粧をしたり」


「一目見たひとを好きになる、妖精の惚れ薬をばらまいてドタバタを引き起こしたりねぇ」


「そもそも『妖精』とは『恐らく妖精種なのだろうがよくわからない』魔物の総称だ。性格的には似通っているが能力的な個体差が大きすぎる」


「要するに地下二階の『岩妖精』とか水辺の迷宮にいる『水妖精』、火山地帯の『火妖精』みたいに明確な分類が出来ない雑多な妖精をまとめて『妖精』と呼んでるにゃーよ」


「なるほど。それで、『よくわからない』のが『妖精』と」


「因みに素材としての価値は絶無にゃ。妖精自体は何の素材にもならないにゃ。稀に、さっきセージにゃんが言ってた『妖精の道具』が手に入るくらいにゃ」


「なんでそんな魔物を捕まえるんでしょう」


「珍しいからじゃないかにゃ。あいつらは『岩妖精』とかと違って一つの迷宮に定住しねーにゃ。あっちこっちの迷宮を渡り歩いて、騒ぎの種をばらまいては消える渡り鳥ならぬ渡り妖精にゃ」


「変な魔物ねぇ」


 アルリアナの言った『変』が、妖精の何よりの特徴であるかもしれない。

 話をしているうちに、PTは妖精の群れが目撃された小迷宮地下六階に辿り着いた。


 地下六階、ランタンがなければ足元も見えない暗い洞窟は――光に溢れていた。

 幻燈のように優しい明かりが球となって、いくつも、宙に漂っている。

 淡い光を閉じ込めたシャボン玉のように宙を漂っている。


「きれい」


 思わず、ティルムが呟いた。

 地下深く、どこかから吹いた風が枯葉色の髪を揺らす。

 枯葉色の髪と共に、淡い光の球もまた風に流されてゆらりゆらりと宙を流れた。

 ティルムだけではない。アルリアナも、ククリカすらも言葉を失い見惚れた。

 どこか儚く、幻想的な光景だった。


「おやおや、おやおや、ニンゲンさんだね」


「ようこそ、ようこそ、ニンゲンさん」


 幻想の中をふわふわと、二人の妖精がやって来た。

 身長は人間の拳から肘までと同じ程度だ。背中には二対四枚の透明な羽根、洒落た花の帽子と派手な色合いの服を身に纏っている。妖精と聞いて真っ先に想像するだろう、小さく愛らしい存在そのものだ。

 妖精たちはつぶらな瞳に好奇心の光を宿して、ティルムたちを見ていた。

 次の瞬間、セージはククリカのカートから持ち出した虫取り網を振るった。

 虫取り網一閃――二人の妖精を捕獲した。


「よし」


「よし……じゃないですよ! なにしてるんですかセージさん!」


「仕事だ。捕獲が、魔物の。警戒心が、ない、楽な、獲物だ」


「冒険者としては正しいのかもしれないけどぉ、さすがの私も引いたわぁ」


「このLV七は容赦ねえにゃあ。でも、妖精の理不尽もなかなかにゃあよ」


 と、ククリカが頭の上のネコミミを揺らすように肩をすくめた。


「おもしろい、おもしろい、今のどういう遊び?」


「はやい、はやい、見えなかったね!」


 きゃいきゃいと、網の中で妖精たちが喜んでいる。

 鱗粉、光の粉が妖精の体から零れ落ちる。

 光の粉が網に付着すると、網の目はぐいーっと妖精が通り抜けられるほど大きく広がった。不思議なことに網は破れない。妖精が出て行くと網の目も元の大きさに戻った。

 セージが網と、妖精を、交互に見やり、最後に首を傾げた。


「……」


「な、理不尽にゃ? 多分、檻にぶち込んでも普通に出てくるにゃーよ」


「え、えー……どうやって捕まえれば良いんでしょうかね」


「やっぱりすんなりとは行かないのねぇ。まったく、相変わらずの貧乏くじだわぁ」


 くすりと、アルリアナは口元に手を当てて微笑んだ。

 十三歳の少女神官には似合わない、大人びて、皮肉で、艶めいた微笑みだ。


「捕まえられないならぁ、岩妖精の時みたいに自分から捕まってもらうしかないんじゃないのぉ」


「そうですね。妖精さんを説得して『計画』に協力して貰いましょう」


「説得が通じれば良いにゃあ」


 改めて、ティルムは妖精たちに声をかけた。『計画』について説明し、協力して欲しいと持ち掛ける。代わりにこちらも出来る限りのことはする。


「と、いうことです妖精さん。なにか、お困りのことはありませんか」


「あるよ、あるよ! ゲストがいなくて寂しかったよ!」


「ゲスト、ゲスト! ニンゲンさんダンスパーティーにようこそ!」


「はい? えっと……ダンスパーティーですか」


「そうだよ、そうだよ! みんなで踊るの!」


「踊るよ、踊るよ! 輪になって踊る!」


 言って、二人の妖精は互いの手を取った。ティルムを中心にふわふわぐるぐる八の字を描くように踊り始める。きらきらと踊りに合わせて光の粉が舞い、星屑のように煌めいている。

 美しい光景だ。しかしティルムは困ったような微笑みを浮かべて仲間たちに問う。


「えっと……いまいち話が通じてない気がするんですが参加しますか?」


「ここで断る方が角が立つわねぇ」


「にゃー。ダンスパーティーの最中に改めて交渉かにゃあ」


「……」


 微妙に、若干、方向性を間違えたような気もしなくないが。

 ティルムたち魔物捕獲PTは妖精のダンスパーティーに参加することになった。


 妖精の『群れ』なのだから、無論、妖精はこの二人以外にもたくさんいた。

 各々、ダンスパーティーに備えて準備でもしているのだろう。淡い光の球に照らされた地下六階のあちらこちらに妖精の姿を見ることが出来た。


「必要なもの、必要なもの! ダンスパーティーには何が必要?」


「素敵なドレス、素敵なドレス! かわいい靴に魔法のお化粧!」


「ここだよ、ここだよ! 仕立て屋さん!」


「着替えよ、着替えよ! 素敵なドレスはダンスパーティーですもの!」


 二人の妖精は、ティルムたちを針と糸を持った妖精たちの前に連れて行った。

 針と糸の妖精たちは全部で二十人近くいた。ティルムたちを見るなりきゃいきゃいとはしゃぎ始め、光の粉をまき散らしながらぐるぐるとティルムたちの周囲を回る。


「ニンゲンさんだ、ニンゲンさんだ! ダンスパーティーのゲスト?」


「でもダメ、でもダメ! そんな服じゃダンスパーティーに似合わないよ!」


「大丈夫、大丈夫! 素敵なお洋服を作るのが仕事だから!」


「こんにちは仕立て屋の妖精さん。でも、その前に、ちょっとお話を」


 ティルムは言うが、妖精たちは聞いちゃいない。


「針!」


「糸!」


「ハサミー!」


「レッツ、お着替えー!」


 一人当たり五人から六人の妖精が裁縫道具を持って突撃して来た。


「わっ!」


「えっ!」


「にゃっ!」


「……」


 まさに魔法のような手捌きで妖精たちはティルムたちの着ていた服を切り刻む。普通に考えれば針やハサミが通るわけもないティルムの鎧(騎士団の支給品である)までハサミで切り取られ、針と糸で縫い直される。

 腰の剣をはじめとした、武器も一緒にだ。


「あの、それは!」


「にゃああああ! やめてくれにゃ、武器は高いにゃあああ!」


 抵抗空しく、あっ、という間にティルムたちの服は別物に作り直されていた。

 ダンスパーティーに相応しい華やかなワンピースだ。袖、胸、腰に花の飾りがたくさんついている。背中には小さな、硝子のように透明な妖精の羽がある。


「わあ、妖精のドレスですよ! 子供のころ、ちょっと憧れましたよね」


「おとぎ話のねぇ。でもぉ、これはちょっとかわいすぎるわぁ」


「にゃ、にゃあ……二十歳でこのかわいさは厳しいにゃあ」


 とにもかくにもキュートでプリティで、ふりっふり。

 素材になった服装の差か、彼女たちの服には微妙な差異があった。たとえばティルムの花飾りには金属的な光沢がある。アルリアナのワンピースは白い部分が多く、胸元の部分が秩序神の聖印である天秤の形に抜かれていた。ククリカは最も変化が大きく頭にはネコミミ飾りがあり、腰からやはり猫のような尻尾の飾りがついている。

 しかし、一番の特徴は――


「で――なんでこんなにスカートが短いんですか!」


「これぇ、歩くだけで見えちゃうわよねぇ。大丈夫なのぉ」


「これで踊るのは勇気がいるにゃ! っていうか、勇気がありすぎるにゃ!」


 ――攻め過ぎたスカートの丈であろうか。

 はっきり言って歩くどころか、立っているだけで見えそうである。ティルムは頬を赤くして必死にスカートの裾を引っ張っていた。アルリアナもスカートの裾を気にして落ち着かない様子できょろきょろしている。

 ククリカすら恥ずかしそうに唇を尖らせてスカートを手で押さえている。

 もじもじと体を揺らすたびに、ふわふわとスカートの裾が浮かぶ。

 実のところ花飾りが錘になるため見え放題ではないが、短いことに変わりはない。


「そうかな、そうかな、だってダンスパーディーだよ!」


「大丈夫、大丈夫、みんな同じだから!」


 しかし、仕立て屋の妖精たちは取り合う気配もなかった。事実、仕立て屋妖精たちのスカートも同じぐらいの丈だ。妖精用の服をスカートの丈まで忠実に、人間サイズにしたらこうなっただけで悪意はないのだ。


「え、ええ……妖精さんの感覚ではこれが普通なんですかね」


「……」


 はた、と、ティルムたちはセージの存在を思い出した。

 まさか、セージも同じ服を着せられている? 好奇心と恐怖を半々にセージを見た。

 そこには――全身黒尽くめに黒覆面の上から原色のド派手なワンピース(超ミニ丈)を着たちょっと意味不明な生物が!


「困ったよ、困ったよ、針もハサミが通らなかったよ!」


「仕方ない、仕方ない、だから服の上からお着替えさせたよ!」


 妖精たちの裁縫道具も、大陸最強の生物である竜のうろこを素材にしたセージの黒いつなぎ(全身鎧)には歯が立たなかったのだろう。結果がこれである。


「あははははははははははははははははははははは!」


「ぷっ、いや、なに、それ、だっさぁい!」


「にゃはははははははは! バカにゃ! バカがいるにゃあ!」


 思わず指をさして爆笑してしまったが、きっと、ティルムたちに罪はない。

 笑いの波が収まった後で、平謝りすることになったが罪はない。


「あの、ごめんなさい。つい、面白くて……」


「あれで笑わないのは無理よぅ。でも、謝るわぁ……」


「すまんにゃ。すまんにゃ。マジでごめんなさいにゃあ……」


「いや、気に、する、な。自分でも、わかって、いる」


 セージの心に深い傷を残しながらも、ティルムたちはダンスパーティーに相応しい服を手に入れた。


「次は靴だね! 次は靴だね! 靴屋さんを紹介するよ!」


「お化粧もだよ! お化粧もだよ! お化粧屋さんを紹介するよ!」


 たまたま、靴屋の妖精とお化粧屋さんの妖精が近くにいたため両方を一気にすませた。

 妖精の靴は服と同じように履いている靴を改造された。

 妖精の化粧は例の光る粉に花や草の滴を溶かしたものだった。


「この化粧、質がすげえにゃ。量産して売ったら間違いなく大儲けにゃーね」


「あはは……その量産が絶対に無理っぽいですけどね」


「妖精ですものねぇ」


 妖精の化粧はいわゆるエステに近い。普段から迷宮で活動する冒険者はどうしても肌が荒れ気味になる。ティルムたちも例外ではない。

 そんな荒れ気味の肌が、今は白く輝くようである。

 思わず、自分にうっとりしてしまう。

 ついでにセージの黒覆面も普段よりしっとり潤っていた。

 一方、妖精の靴の方は。


「わわっ。すごい! わたし、浮かんでますよ!」


 念じると体が宙に浮かんだ。そのまま空中を進んだり戻ったり上がったり下りたりと自由自在だ。まさに、地上を歩くように動き回れる。


「面白いわぁ。これ、普段の探索でも便利そうよねぇ」


「これ欲しいにゃあああ! 超欲しいにゃああ! 持って帰るにゃあああああ! 探索でお役立ちが間違いなさすぎるにゃあああああああ!」


 ティルムたちは跳んだり跳ねたり、面白がって空中ではしゃいでいた。

 暗い洞窟を淡く照らす光の球が、ふよふよと彼女たちの傍に漂っている。

 ふと、ティルムは光の球に触れた。ほんのり温かく、むにむにと弾力がある。巨大なマシュマロのようだ。


「妖精さん! この光の球って、なんなんでしょうか?」


「灯りだよ。灯りだよ。妖精のランタンだよ」


「へえ」


 漂う光の球、『妖精のランタン』を軽く掌で押してみる。

 ふよよんと、光の球が空中を移動する。

 結局のところ、それは油断だった。


「あっ」


『妖精のランタン』同士がぶつかって、一つがふよよんと下に弾かれてしまう。

 地上のセージが軽く平手で叩き上に戻す。


「すみませんセージさ……ん……」


「どうしたのよぅ」


「にゃー?」


 みるみる、ティルムの顔が赤くなった。

 アルリアナとククリカが訝しむ。そして、彼女たちも地上のセージに気付く。

 自分たちが、攻め過ぎたスカート丈の妖精ワンピースを着ていることを思い出した。

 桃色、薄い青色、黒、下からではもはや全開だ。むしろ満開と言ってよいだろう。


「……」


 肝心の見ている側は全く楽しそうでないというか、塵ほどの興味もなさすだがそれと乙女心には何の関係もない。

 ティルムの瞳に、じわりと涙が浮かんだ。


「うわああああああああん! ま、また見られたあああああああ。わたし、こんなのばっかりだあああああああ。うわああああああああああん!」


「……!」


 涙が浮かんだかと思ったら、子供のように泣きじゃくり始めた。

 ティルムだけではない。


「恥ずかしいわぁ、恥ずかしいのにぃ! 恥ずかしいと思えば思うほど恥ずかしくなってぇ、恥ずかしさが止まらないのぉおおおおおおお!」


 びくんびくんと、アルリアナの幼い体が震えている。頬は赤く上気し、喘ぐように叫び、びくんびくんと震えている。


「にゃあああああああ! 見られたにゃあ! もうお嫁にいけないにゃあ! 責任とれにゃああ! もしくは金を払えにゃああああ、金ぇええええええええええ!」


 ククリカは空中で寝ころんで器用に駄々をこねていた。両手両足をぶんぶんと振り回し、金、金と叫び続ける――彼女だけは普段とあまり変わらないかもしれない。


「なん、だ。こいつ、ら」


 ともかく、普段と反応が違うティルムたちの反応にセージはドン引きしていた。

 大陸に十三人しかいない最強、LV七の『首狩り屋』は腰が引けている。

 今にも、全部投げ出して家に帰ってしまいそうな雰囲気だ。

 ティルムが叫んだ。


「違うんですぅううううう。そんなに悲しくないのに、涙が止まらないんですぅうううう! うええええええええええん! わたし、どうなっちゃったんですかあああああ!」


「呪い……の、一種、か?」


 ぎりぎりで踏みとどまったセージが、状況を分析し呟く。


「強制的に泣かせる? いや、アルリアナとククリカは泣いていない。感情が暴走しているのか……そもそも、こんな呪いを、いつ、受けた――」


「素直になるよ! 素直になるよ! 妖精のお化粧は不思議なお化粧!」


「悲しいときはもっと悲しく! 嬉しいときはもっと嬉しく! 自然のままに!」


 原因が判明した。


「にゃあああああああ、このクソ妖精どもぉおおお何してくれるにゃあああああ! 金目のものを寄越せにゃああああああ! もしくは結婚相手が欲しいにゃああああああ!」


「これえええええ、どうやったらあああああ、止まるんですかあああああああああ」


 ティルムの問いに、二人の妖精はそろって小首を傾げた。


「止める? 止める? なんで?」


「止まる? 止まる? いつのまにか?」


「あはははははははははははは! それ、つまり、わからないって、あははははは! こ、今度は、おかしく、なって、来ちゃいまし、あはははははははお腹痛いあはははは!」


「ひぐっ、えぐっ、なによぅ。どうしろってのよぅ。やだぁ、涙、出てきたぁ。いやぁ、お願いだからぁ、見ないでぇ。泣き顔、なんてぇ、見られたくないわぁ」


「寂しいにゃあ! 寂しいにゃあ! わけもなく寂しくて腹が立つにゃあ! ああああああああにゃーはこのまま一生一人ぼっちなのかにゃあ。お金は大切だけと冷たいにゃあ。にゃーにはお金しかないのに、にゃーの欲しいものはお金で買えないのにゃあああああああああああ! ああああああ生きとし生けるすべてのものに腹が立つにゃあ。でも一番腹が立つのは、こんな自分自身にゃあああああああああ!」


 今度は全く別の意味で涙を浮かべ、ティルムがお腹を抱えて笑っている。アルリアナはぼろぼろと涙を零し、ククリカが無意味に怒り狂っている。

 はっきり言って怖い。

 セージはまたも腰が引けている。


「妖精の化粧、が、呪いに近い、性質ならだ。精神を、集中させ、て、呪いに、抵抗する。呪いに、打ち勝てば、効果も消える、はずだ」


「あはっ! あははははは無理、絶対無理ですふひっ! こんなふひひひ、集中できな――うひひひひひひひひひ! やだぁ、変な笑い出るぅ。ふひひひ!」


「……」


 すっ、と、セージが妖精の靴の効果を発動して空を飛んだ。

 涙を流して笑い続けるティルムの両肩を、強く掴む。


「しっかりするんだ、ティルム」


「ふひゃっ、あひっ、せ、セージさん。でも、こんなの、無理ぃ」


「おまえが、しっかり、しなくて、どうする。PTの、リーダー、だろう」


「やりたくてリーダーしてるわけじゃありませんよ! 誰もリーダー出来ないから、仕方なくやってるだけで……ふぇええええええん、誰かぁ、代わってくださいよぉ、わたしぃ、正直、毎日、いっぱい、いっぱいなんですからねぇ」


「わかっている。それでもだ――」


 セージは言った。


「おれには、おまえが必要なんだ!」


「ふえっ!」


 笑って、怒って、泣いたティルムが硬直する。

 その頬が、熟したリンゴのように赤く染まる。

 恥ずかしそうに眼をそらす。


「そ、その、急にそんなことを言われても、困りますね。いえ、全く嬉しくないわけでもないんですけど、あの、返事はもうちょっと待って欲しいかなって……」


「……?」


 なお、セージの発言は『唯一の常識人であるティルムがいなくなったらこのPTは崩壊まっしぐらなので、いてもらわないと困る』という意味である。

 人見知りで口下手なセージに十全な会話を求めるのは酷であろう。

 普段のティルムならば、セージの口下手を汲んで、本当に言いたかったことに気付いたかもしれない。

 だが、今は、ひとの心にある感情の芽を増幅させて開花させる『妖精の化粧』の効果を受けている最中だった。

 もじもじと、ティルムは指を絡ませる。

 ちらちらと、ティルムは上目づかいにセージを見る。

 冷静に考えれば不審者スレスレの、黒覆面黒尽くめ男が、彼女の瞳にはまるで王子様のように見えているのかもしれない――


「わ、わたしも――」


 そして、妖精の化粧の効果を受けているのはティルムだけではない。


「死ねにゃああああああああああああああああああ!」


「……!」


 ぐぎゅっ! ククリカが背中側からセージの首筋に腕を回した。もう一方の腕と合わせて一気に締め上げる。完全に殺す気の関節技だ。

 関係ないが、背に、ククリカの二つの膨らみが強く押し付けられている。いつもの分厚い布鎧ではなく、生地が薄い妖精のドレス越しなので、その存在感はマシマシだ。

 嫉妬に狂った悪鬼のような顔をしているのはこの際、忘れるべきであろう。


「にゃーの前で甘酸っぱい空気を漂わせてるんじゃねえええええにゃあああああ! 同じPTの仲間なら、にゃーと一緒に苦しむがいいにゃああああああ! 幸せになるやつが許せねえにゃあああああ!」


「このっ、このっ、このっ!」


 ずびっ、ずびっ、ずびっ! さらにはアルリアナがセージの脇腹にしつこく手刀を差し込んで来る。地味に効果的な嫌がらせだ。

 怒っているのか拗ねているのかわからないような顔をしている。

 普段ならば仲裁に入ってくれるティルムも、妖精の化粧のせいでもじもじしている。

 セージは、その気になれば自力で脱出できることも忘れ、わりと死を覚悟した。


「うう……や、やっと落ち着きました」


「末代までの恥だわぁ……」


「安心するにゃあ。きっと、おまえで末代にゃあ」


「その言葉ぁ、そっくりそのまま返してやるわぁ、この独身」


「あ、あはは……おとぎ話なら、妖精の道具のおかげで幸せにんれるんでしょうけど」


「ろくなもんじゃないわねぇ」


「にゃあ、喉が渇いたし疲れたにゃあ」


 自身の感情の振り回され疲弊したティルムたちは足を投げ出しぐったりと座り込んでいる。

 パンツが見えているが、気にする余裕すら失われているようだ。


「もう見たけりゃ見るが良いにゃ。どうせいるのは妖精とセージにゃんだけにゃ」


 妖精と同列に扱われたセージは彼女たちの前に、大きな葉っぱを折りたたんで作ったコップを置いた。

 葉っぱのコップはわずかに輝く不思議な水で満ちていた。顔を近づけると、優しく、甘い匂いが鼻をくすぐった。


「茶、だ。いくら、か、蜜、を溶かして、ある」


「ありがとうございます」


 それぞれに礼を言って、そのお茶を飲み干した。

 渇いた喉を茶が潤す。蜜の優しい甘みが癒して行く。

 心が落ち着く。思わず、ほうと、ため息が出た。


「美味しい。これ、なんてお茶ですか?」


「『妖精の茶』、だ、そう、だ。頼んだら、出て、来た」


「ふぅん……ちょっとぉ、大丈夫なのぉ、これぇ」


「化粧みたいに変な効果があったりしねえにゃ?」


「大丈夫、だ。おれが、先に、飲んだ。安全だ」


「それなら安心ですね……」


 ティルムは、急に恥ずかしくなり、視線を逸らす。

 妖精の化粧はあくまで感情を増幅させるものだ。まったく、これっぽっちも、全然、抱いていない感情を増幅させることはない。


「……まあ、もう、PTを組んでそれなりに長いですし、全くそういう感情がないのも不自然ですよね。仲間意識とか友情的なあれが、あれで、あれしても、おかしくはないはずです。気にしないことにしましょう」


 ぶつぶつとティルムは自分に言い聞かせるように呟き、また妖精のお茶を口に運んだ。

 もやもやとした気持ちと一緒に、お茶を飲み干す。

 仄かな甘みと共に、喉の奥へ、流れ去って行く。

 そこに、ティルムたちを案内してくれた二人の妖精がやって来た。


「もうすぐだよ、もうすぐだよ。ダンスパーティーはもうすぐだよ」


「わくわく、わくわく。みんなで楽しく踊ろうね」


 透明な羽から光の粉を零して、ぐるぐると、踊るようにPTの周囲を飛んでいる。


「だけど足りない、だけど足りない。あと一つ、ダンスパーティーに大事なものが」


「そうなの、そうなの? かわいい服にきれいな靴、素敵なお化粧と楽しいゲスト、あとは何が足りないの?」


 二人の妖精は謎かけめいた口調で語り、ティルムたちを見ている。


「えっと……ダンスパーティーに足りないもの、ですか? お料理?」


「お料理は素敵だね! お料理は素敵だね! でも踊りながらお料理は食べられないね」


「お祈り……じゃないわよねぇ」


「お祈り? お祈り? それって楽しいもの?」


「楽しくはねえにゃあ。ダンスパーティーに必要そうなものといえば、照明、会場、招待状……にゃ! あ、わかったにゃ、ダンスパーティーに欠かせないのは音楽にゃ!」


「音楽! 音楽! 素敵な音楽はダンスパーティーに必要だよね!」


「踊れない! 踊れない! 音楽がないとダンスパーティーは始まらない!」


 どうやら正解のようだ。二人の妖精はぱしーんとお互いの掌を打ち合わせる。

 ぱあっとティルムの顔が明るくなる。


「音楽なら、ククリカさんの得意分野ですよね!」


「おう、任せとけにゃ」


「妖精さん! ダンスパーティーのために、とっても素敵な音楽を用意しますから、『計画』に協力して貰えませんか。とりあえず話だけでも聞いてくれると助かります」


「素敵な音楽、素敵な音楽? ニンゲンさんの素敵な音楽!」


「初めてだね、初めてだね! 今日のダンスパーティーはとっても素敵になるよ!」


「あの……わたしの話を聞いて…………ないですよねこれ」


「こいつらぁ、自分たちに都合のいいことしか聞いてないんじゃないのぉ」


「にゃるほど大体わかってきたにゃ。妖精たちは『楽しい』が一番大事な魔物ってことにゃーね。ティルムにゃん妖精との交渉、にゃーに任せてくれにゃ」


「乱暴なのとか強引なのはやめてくださいね」


「心配無用にゃ! にゃーの名前はククリカ・テンセル。公平と公正がモットーの善良な商人さんにゃ!」


 きらーんと、ククリカの瞳が金貨のように輝いた。


「妖精のみんなー! 聞くにゃー! ダンスパーティーが終わったら、にゃーがもっともっと楽しいところに連れて行ってやるにゃ!」


「もっと? もっと! 楽しいところ!」


「すごい! すごい! ニンゲンさんの楽しいところ!」


「楽しいところがあるの! 楽しいところがあるの! 楽しいところは楽しいよ!」

「いえーい、いえーい、楽しいところいえーい!」


「わあ、どんどん妖精さんが集まって来ますよ!」


「にゃはは。大成功にゃ」


「大丈夫なのぉ。なーんか、不安なんだけどぉ」


「……わか、らん」


 気が付いたら、ティルムたちは大量の妖精に囲まれていた。

 おそらく、地下六階にちらばっていた妖精が残らず集まったのだろう。


「まだ? まだ? 始まらないの?」


「いつ? いつ? 始めようよ!」


「夜が、夜が、明ける前に!」


 妖精たちの瞳は無邪気に、わくわくと、輝いている。

 ククリカはカートに積んでいた楽器(リュートに似た弦楽器)を取り出した。

 ぽろろん、と、軽く爪弾き音の調子を確かめる。


「よっしゃあ! おまえら、夜通し楽しく踊って行くにゃあ!」


「いえーい! いえーい!」


 じゃららん、と、ククリカが派手に、大きく一度、弦を鳴らした。

 妖精たちが歓声を上げて沸き、ダンスパーティーが始まった。


 聞いているだけで体が動くような、アップテンポの曲だった。

 ネコミミと猫尻尾を揺らして、ククリカは体全体で楽器を鳴らしていた。

 宙を漂う『妖精のランタン』は、赤、青、緑と、曲に合わせるように光の色を変えて、暗闇の中を照らし出す。

 妖精たちは音楽に乗って踊っている。空中を自由自在に、どこまでも奔放に、だが全体を見れば調和して、一つの生き物であるように。

 奇妙な幻燈。幻想の舞踏。

 激しく、激しく、踊るほどに昂る。

 ティルムたちの体もまた、むずむずと、疼き始めた。

 ティルムの肩が、膝が、自然にリズムを取って踊りだす。

 アルリアナもそうだ。どこか困惑したように今にも踊りだしそうな体を見ている。


「凄い……ククリカさん、これが音楽の力なんですね」


「確かに上手いけどぉ、何か、変じゃ、ないかしらぁ」


「ああ、見事な、『呪歌』、だ」


 セージが言った。


「……『呪歌』ってなによぅ」


「全ての、魔法の、原型と、呼ばれる、技術だ。歌に、力ある、言葉を乗せて、放つ」


「えっと、吟遊詩人技能で扱える魔法の歌でしたよね?」


「そう、だ。魔法と比べ、発動する、まで、時間がかかる。効果は、弱い。種類も、乏しく、有用な、呪歌は、少ない。不人気な、技能、だ」


「良いところがないわねぇ」


「効果範囲が、広い。声と音の、届く、距離、全てに効果が、ある」


「あの、もしかして……わたしたちが踊りたくなってるのも呪歌の?」


「『高揚』の呪歌、だ。本来、なら、戦闘中の、士気を、上げるために使う。多少、ククリカ流の、アレンジが、入っているようだ、な」


「それで妖精さんたちもノリノリなんですね。って、反則じゃないですかそれ!」


 叫ぶうちに、ティルムも我慢できなくなって踊り始めた。アルリアナもだ。

 妖精のワンピース、短いスカートをひらりひらりと、揺らすように体が動く。

『妖精のランタン』の灯りを反射して、背中の透明な羽がきらきらと輝く。

 妖精の靴の力で体が浮かんでしまう。


「ちょっとぉ! LV七はどうして踊らないのよぅ!」


「呪歌は、効果が、弱い。精神を、集中、すれ、ば、効果を、打ち消せ、る」


「踊り始める前に言ってくださいよ!」


「そうよぉ! 踊りながら精神集中って無理に決まってるじゃないのぉ!」


「……!」


「なんですかその『しまった、そうするべきだった』って顔は!」


「あなたこそぉ、なんで覆面してるのに表情がわかるのよぅ」


「え、なんとなくわかりません?」


 そんな会話をする間も、二人の体は勝手に、リズムに乗って踊っている。

 やがて何事か思いついたのか、がしり、と、二人はセージの腕をつかんだ。

 ティルムが右腕を、アルリアナが左腕を、しっかりとホールドする。


「こうなったら自棄ですよ! セージさんも一緒に踊りましょう!」


「お兄ちゃん一人だけぇ、無傷なんて許せないわぁ」


「待て、おれ、は――!」


 精神を集中していれば呪歌の効果を打ち消せる。逆に言えば、集中を乱せば呪歌の効果に巻き込まれてしまう。

 無論、セージならば、再度精神を集中させて自由になることも出来ただろう。


「セージさん」


「お兄ちゃん」


 が、今回ばかりはセージも諦めるしかなかった。

 絶対に逃がさないと、ティルムとアルリアナの瞳が雄弁に告げていたからだ。


『妖精のランタン』に照らされて、妖精たちに混ざって、ククリカの奏でる音楽に乗って、ティルムたちは踊る。


「きっかけは呪歌でしたけど、踊ってみれば、結構楽しいですね」


「悪くはないわねぇ」


「……」


 ククリカの音楽は加速する。

 ダンスパーティーはさらに高揚する。

 妖精流に言うならば、『楽しい』が、満ちに満ちて行く。

 やがて――宙をふよふよと舞っていた『妖精のランタン』が弾けた。

 ぷるぷると震えて、ぱぁんと弾けた。

 弾けて、そこから、新しい妖精が現れた。

 次々に、新しい『妖精のランタン』が弾けて新しい妖精がが生まれていく。


「こんにちは! こんにちは! 新しい仲間!」


「こんにちは! こんにちは! 新しい仲間!」


「ありがとう! ありがとう! 楽しいがたくさん集まって仲間が増えたよニンゲンさん!」


『妖精のランタン』が弾けるたびに、周囲は少しずつ暗くなっていく。

 本来の小迷宮地下六階の姿に戻って行く。

 妖精たちの踊りが見えなくなり、声が聞こえなくなり。

 ティルムたちは、抗いがたい、眠気に襲われる。


 枯れた小迷宮の地下六階、ティルムたちは冷たい土の上で目を覚ました。

 周囲は暗く、しんと静まり返り、魔物の気配すらもない。

 忘れ去られた土地に特有の湿った空気だけが残されていた。

 あれほどいた妖精の姿もない。妖精のダンスパーティーの痕跡も残っていない。

 ティルムたちの装備は武器も含め元に戻っていた。

 全て夢だったのか? 幻を見ていたのか?

 否、一つだけ、あれが夢でなかったと示す証が残っていた。

 妖精の化粧でつるつるになった肌である。


「これは、もしかして、捕獲失敗、ですかね?」


「みたいねぇ」


「あのクソ妖精ども、結局、こっちの話は何一つ聞いてなかったってことかにゃあ」


「あれは、妖精の、繁殖、だった、のか。なる、ほど、やはり、奇妙な、魔物、だ」


 一人、全然別のことを考えているのは置いておこう。

 ティルムはつやつやになったほっぺに触れて嘆息する。

 魔物捕獲PTにとって、初めての完全な失敗になるのではないか。

 PT全体に、落胆の雰囲気が漂っていた。


「そんな時も、ありますよ」


 場の空気を察してティルムが言った。


「誰もやったことのない『計画』なんですから、失敗ぐらいありますよ。今回の失敗は次に生かして、頑張りましょう」


「偽善者らしい前向きさねぇ……ま、今回は素直に受け取っておくわぁ」


「にゃはは。考えてみれば、にゃーだって駆け出し時代はたくさん失敗したにゃ。失敗が一つ増えたぐらい大したことじゃないにゃーね」


「『生きて戻れば、冒険は成功だ』と、言う、からな」


「はい、生きてれば何とかなります」


 ぐっ、と、ティルムは拳を握る。


「帰って、美味しいものを食べて、また明日から頑張りましょう!」


 誰からともなくティルムたちは笑みを浮かべた。

 かくて、PTは失敗を糧にまた一つ団結を深めた。

『計画』のための寄せ集めのPTも、いつかは本当の意味で仲間になる。

 魔物の捕獲にこそ失敗したが、ティルムたちは前向きな気持ちを胸に迷宮を出た。


 そして数日ぶりに帝都へ帰還したティルムたちの目に飛び込んできたものは――


「ニンゲンさん! ニンゲンさん! とっても楽しいはどこにあるの?」


「とっても楽しい! とっても楽しい! 色んなものがあるね!」


「なんだろう! なんだろう! わくわくするね!」


「わーい! わーい!」


 ――大量の妖精が出現して、大混乱になっている帝都の姿だった。


「え、えー……これ、もしかしなくても、わたしちが原因です、よね?」


「さあねぇ。とりあえず、仕事に失敗はしてなかったねぇ」


「にゃはは。これなら失敗した方がましだったにゃーね」


「……」


 人間に友好的な妖精とはいえ、地上に大量の魔物が出現するという前代未聞の事態を解決するべきティルムたちは不眠不休で帆走することになった。

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冒険者世界も不景気です 世界最強の人見知りと魔物が消えそうな黄昏迷宮/葉村哲 MF文庫J編集部 @mfbunkoj

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