葉村「パンの話の時に書き忘れてたんだけど、我輩、黒パンというのを実際に食べてみたことがあるんだよ。なんか健康に良いって話も聞いたし」
担当「健康に良いって話はどこかで聞きましたね。美味しかったですか?」
葉村「単体だと微妙だった。我輩が食べたのはプンパーニッケルというライ麦含有率九十%以上の黒パンで本格的に黒い。葉書ぐらいの大きさで厚さ三ミリ程度にスライスされていた。食べると酸味があってぼそぼそしている」
担当「それは……いまいちっぽいですね」
葉村「ただね、バターをごってり塗って食べると美味い。ぼそぼそ感がマイルドになって微妙だと思った酸味が味のアクセントになる。本場ではクリームチーズとかジャムをごってり塗るらしいよ。あとはバターを塗った上にトマトや生ハムなんかを乗せても美味かったね」
担当「……」
葉村「我輩が思うに、黒パンのくせに負けない味と脂が強いものと合わせると美味くなるんじゃないかな」
担当「健康には悪そうですね」
葉村「問題はそこだよ! 六枚入りを食べ終わったころにはバターが三分の一ぐらいなくなってたんだ!」

 と、いうことで案の定だけど後で気持ち悪くなった我輩が黒パンの美味しい食べ方を募集する適当中世コラム(最終回)が始まります。
 今回のテーマは男の子ならみんな大好き、棒切れを振り回して怒られた経験がないとは言わせない、『武器』です。
 早速、我輩お気に入りの武器を取り上げましょう。
 ちゃららっらー、『盾(たーてー)』
 武器じゃない?
 ふっ、それはおれの必殺盾パンチを食らってから言うんだな!
 正確にはシールドバッシュと呼ばれています。
 いきなり前言を翻しますが盾はあくまで防具です。しかし攻撃にも使われていました。
 盾パンチや体当たりで衝撃を与えて相手の体勢を崩す。淵の部分で鋭く殴る。相手の武器を押さえつける。あるいは単純に相手の目の前に突きつけて視界を覆う、と言った感じですね。
 良い感じに頭を殴ったら相手が倒れたとか、体当たりのつもりだったけど相手が昏倒したなんて場合もありますが基本的には本命の攻撃を当てるための小技です。
 だからこそ、そこに盾使いの渋さを感じます。
 戦術的に用いて戦闘を有利に運ぶという意味では盾も立派な武器の一種ではないでしょうか。
 さあ、みんなも、盾を地味に渋く使いこなして、友達に差をつけよう!
 単に思いつきで盾の話がしたくなって理屈を捏ねた訳じゃないよ?
 因みにこの盾ですが基本的に木製です。木の上に革を張ったり金属で補強したりして作成されます。よくRPGなどで『アイアンシールド』なんてのが出てきますが、これは鉄で補強された盾とみるべきでしょう。総金属製の盾は、余程小型のものを除けば、滅多にありません。
 まあ、普通に考えて重いよね。
 少し横道に逸れますが中世騎士の用いる全身甲冑も鉄板の厚さは数ミリ程度、重量も三十キロ前後だったとか。それでも動き回ると内側に熱が篭って熱いやら息苦しいやらで大変だったとか。一度転んだら立てないと言われてるのも鎧の重さじゃなくてそっちが原因だったんじゃね?
 閑話休題。
 盾の話に戻ります。ヴァイキングなどは木製であることを逆手に取っていて面白いです。あえて補強せず、相手の武器が盾に食い込み動かし辛くなるように作っています。攻撃を防ぐ、という意味では下手に総金属製の盾を使うよりも有効かもしれません。
 ついでに、安くついたでしょう。
 続いて日本の盾についてです。
 時折、日本では盾を使わなかった、という話を聞きます。
 これは半分正解ですが、半分間違いです。
 まず、日本でも古くから盾は存在していましたし使われていました。
 しかし、時代が進むと侍が戦士階級として台頭します。
 侍は世界でもわりと珍しい重装弓騎兵です。鎧を着こみ、馬に乗り、戦場を駆け回りながら弓を撃ち、太刀を抜いて突撃するという、逆におまえ何が出来ないんだよと聞きたくなるような兵種です。
 SRPGとかで登場したら一人でバランス崩してるクソユニット扱いは間違いなしですね。
『弓取り』や『弓馬の道』という言葉があるように武士のメインウェポンは弓でした。必然、手に持つタイプの盾を使われなくなり、細々と一部で使われる程度にまで廃れてしまったわけです。
 一方、弓矢から身を守る置盾や竹束(どちらも読んで字の如くのものです。簡易的な壁として用います)といった地面に設置するタイプの盾が有用性を増し、頻繁に使われるようになりました。
 日本の盾は手に持つものから地面に置くものに変化した、というのが正確なところでしょう。
 わたしの大好きな盾パンチもありません。くそっ、なんてことだ!
 盾パンチがない腹いせではありませんが、やべえぐらい強い侍の弱点を紹介します。
 ぶっちゃけ金がかかる。
 馬、高いです。鎧一式、高いです。武器、良いものはやっぱり高いです。
 馬を自在に操り馬上で弓を射たり太刀を抜いて突撃する技術を習得するには時間も金もかかります。何をするにも金、金、金!
 確かに弱点だけど、逆に言えばそれだけ金持ってるから侍やれてるってことじゃねえか!
 やっぱり現実はクソだな!

 と、いうことで金のない我輩は酒を飲んで寝ます。

『近況ノートはもっと軽い日記のようなものでよかったと今更知らされた』葉村哲