3
――どうして転職しようと思われたのか、教えていただけますか?
K うーん……。なんていえばいいんですかね、前職は、確かに多くの人の役に立っていたんですけど、それを自分で実感できる機会が少なかったんですよね。だから、自分で直接、顧客の笑顔に接するような仕事がしたかったんです。
――今は、笑顔を実感されているわけですね。
K そうですね。本当に問題が解決して、顧客から「ありがとう」って言ってもらえたら、ああ、やってよかったな、って感じます。こういうやり方だから(笑)、時間と手間がたくさんかかっちゃうんですけど。
――充実感があるわけですね。
K はい。前職は、ある意味で、仕事を終えた後はもう後の人にお任せって感じだったんですね。今は、相談を受けたところから最後まできっちりお手伝いできるので。それが本当にやりがいにつながってるな、って感じます。
――でも、忙しいんじゃないですか?
K はは、確かに(笑)。時には何件も掛け持ちして進めることになっちゃいますから、スケジューリングが大切ですよね。もう若くないので、規則正しい生活の大切さを実感してます。
――仕事とプライベートの使い分けってされてますか?
K うーん……あんまり、ないですね。仕事が趣味って感じで(笑)。むしろ、仕事していないとストレスがたまってきます。休日もあんまり関係ないですし、そういう意味では毎日充実しています(笑)。
男の姿を見ると、うれしい、と思うようになっていた。
男がいるときだけは、音楽を止めてくれる。ただでさえ眠れていない頭の中を、古臭いテクノがぐるぐるとまわり続ける。何十分もしてから、ようやく耳がかすかに聞こえるようになってくる。
いつものようにコトを済ませてから、男は俺の耳元に顔を近づけてこう聞いた。
「何か、願いはあるか?」
俺は、何度も何度も口を動かして、そのたび声の出し方を思い出そうとしていた。
何度も、何度も。男はそれを辛抱強く待っていた。
「いえに……」
自分で自分の声を聴くのがあまりに久しぶりで、驚きで声が止まった。
目をぐるぐる回しながら、必死に言葉をつづけた。
「いえに……かえりたい……」
――では、家族の絆を取り戻すことができたわけですね。
K そうですね。息子さんも、本当に家族の大切さを思い出してくれたみたいで。今では、ずっと家にいてくれて。家族の時間が増えたらしいです。
――顧客の笑顔ですね。
K 私のところに相談にいらしたのは、やっぱりご両親ですから。そちらの気持ちを大事にしたかったんですよね。でも、喜んでくれました。「昔みたいな関係に戻れた。前よりもずっと距離が縮まった気がする」と。本当にうれしかったです。
――転職で、Kさん自身の人生も輝いたわけですね。
K このコーナー風に言うなら、そうなりますね。ちょっと照れくさいですけど(笑)。
――そろそろお時間なので、これから転職を考えている方に対して一言お願いします。
K うーん……他人を変えたいなら自分から。当たって砕けの精神を持ってほしいですね。
――「当たって砕けろ」ではなく?
K はい(笑)。
――Kさんらしいお言葉ですね。本日はありがとうございました。
K ありがとうございました。
意外な転職!?インタビュー!/暗い部屋 五十貝ボタン @suimiyama
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます