三国統一が成されても、動乱は終わらなかった。再びそこから始まったのだ。
- ★★★ Excellent!!!
「襲」という漢字には、2つの異なる意味がある。
1つは、一般的に知られるとおり「襲撃」の意味。
もう1つには、「正統なものを引き継ぐ」という、
「襲名・世襲」の熟語に表現される意味がある。
さて、本作のタイトルに掲げられた「襲う」とは、
果たして、どちらの意味で使われるのだろうか。
三国時代の動乱を制した司馬氏は西晋を建てた。
が、その短命な王朝の下、世は太平から程遠く、
帝位は最早、唯一志尊の座とは呼べなくなった。
諸王が血で血を洗って争う景品に成り下がった。
本作の語り手は陳元達。匈奴の血を引く文官で、
同じく匈奴の劉淵が建てた漢の重鎮の1人である。
誠実でどこか朴訥なところがある陳元達の目には、
武を以て道を拓く劉淵や石勒たちがどう映ったか。
まさに綺羅星のごとく、癖の強い武将たちが現れ、
劉淵という傑物の下に引き寄せられて集ったこと。
そして時が流れ、彼らがそれぞれに選んだ行く末。
陳元達の穏やかな語り口が900年前へと読者を誘う。
佐藤さんちと河東さんちで何度かお会いする内に、
劉さんちの武将の面々もだいぶわかってきました。
とんがってる石勒少年が痛々しくも可愛いですね。
面白く拝読しました。